今回のニュースのポイント
医療機関の倒産が20年で最多を更新:東京商工リサーチ(TSR)の調査によると、2025年度の医療機関倒産は71件に達しました。現在の集計方式となった2006年度以降の20年間で最多となっており、その約97%が再建不能な「破産」を選択しています。
「患者減」と「中堅病院の危機」:人口減少や受診抑制の影響で患者数が伸び悩むなか、地域医療の要となる中堅病院の倒産が前年比で約7割増と急増しており、施設の撤退・閉院が顕著になっています。
主要コストが5年で大きく上昇:複数の調査で、2018年度から23年度にかけて人件費、医薬品費、水道光熱費などの主要経費が2桁台の伸びを示したと指摘されています。対して収入源となる診療報酬は微増にとどまり、支出の増加分を補填できていません。
「公定価格」ゆえの値上げ不可:一般企業と異なり、医療機関は市場の物価高に合わせて自由に価格転嫁ができない構造的弱点を抱えています。医師・歯科医師団体による調査では、9割超の医療機関が「経費増を診療報酬では補いきれない」と回答しています。
医療機関の倒産が増えているのはなぜか。背景には、人口減少や受診抑制によって患者数が伸び悩むなかで、人件費やエネルギー価格などのコストだけが市場環境に連動して上昇し続けるという、医療経営特有の厳しい構造があります。
東京商工リサーチ(TSR)の集計によれば、2025年度の医療機関倒産は71件と過去20年で最多を更新しました。特筆すべきは、倒産形態の97%超が「破産」であり、民事再生などの再建型はごく少数にとどまっている実例です。なかでも地域医療の核となるベッド数20床以上の中堅病院の倒産が前年比71.4%増と大幅に増えており、経営基盤の脆弱化が明らかになっています。
背景には、収入とコストのバランスが崩れている実情があります。医療機関の主な収入源である診療報酬は国が決定する公定価格であり、近年の改定率は小幅なプラスに終始してきました。一方、複数の調査では2018年度から23年度の間に人件費や医薬品費、水道光熱費などの主要コストが2桁台の伸びを示したとされており、現場では「コストだけが先に走っている」状態です。医師・歯科医師団体による物価高騰の緊急調査でも、9割超の医療機関が「経費増を診療報酬改定では補填できていない」と回答しており、制度と経営実態の乖離が見えてきています。
この問題の本質は、「固定的な公定価格」と「変動する市場価格」の深刻なギャップにあります。一般企業であれば原材料費の高騰を製品価格に転嫁できますが、医療機関にはその裁量がありません。収入は制度で制約される一方で、支出側は最低賃金改定やエネルギー価格など市場要因の影響をダイレクトに受けるため、収益の伸びが費用の増加に追いつかず、赤字病院の割合が増加しています。
医療機関の減少は、社会に直接的な影響を及ぼします。特に地方において中核となる病院や診療所が撤退すれば、地域医療に空白が生まれ、通院距離の増加や高齢者の受診機会の減少を招きます。また、経営体力の乏しい機関が淘汰される過程で、医療従事者が条件の良い都市部や大手グループへ流出し、人材の偏在がさらに加速する懸念も実態として存在します。
地域医療の持続可能性が、次の焦点となります。2026年度の診療報酬改定はプラス改定となっていますが、これまでのコスト上昇に対して十分な水準かは不透明な状況です。同時に、医療DXによる効率化や小規模施設の集約・再編、働き方改革と両立する人材確保策など、経営の近代化への対応が不可欠な局面に入っています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













