人手不足倒産が最多更新 賃上げの限界

2026年04月08日 18:58

画・景気動向・見通し、大幅下振れ。オミクロンとウクライナ情勢で。昨年夏レベルに後退。

人手不足倒産442件、過去最多。賃上げしても利益が出ない中小の苦境。人件費高騰による倒産が77.2%増と激増

今回のニュースのポイント

人手不足倒産は442件と過去最多:前年度の309件から43.0%増加し、統計開始以来のピークを更新しました。

人件費高騰による倒産が77.2%増:賃上げや採用コストの増大を収益で吸収できず倒産に追い込まれる「人件費高騰」型が195件と急増しています。

従業員の退職による事業停止も深刻化:主要な従業員の退職をきっかけに事業継続が困難になるケースが108件(前年度比40.2%増)に達しました。

「賃上げ」が経営を圧迫する構造:人材確保のための賃上げが、価格転嫁の遅れによって直接利益を削り、企業の存続を揺るがす要因となっています。

 人手不足による倒産が増加しています。東京商工リサーチの集計によれば、2025年度の人手不足関連倒産は442件を記録し、前年度比で4割を超える大幅な増加となりました。表向きは「募集しても人が集まらない」という求人難の問題に見えますが、その実態は「賃上げをしても利益が残らない」という収益構造の限界にあります。

 今回の調査で注目すべきは、倒産の要因が変化している点です。求人を出しても集まらない「求人難」だけでなく、既存社員の賃上げや社会保険料の負担増に対応できずに経営が行き詰まる「人件費高騰」型の倒産が195件(前年度比77.2%増)と突出して増えています。これは、人手不足が単なる売上機会の損失にとどまらず、企業のキャッシュを直接削る深刻な「コスト問題」として顕在化していることを示しています。

 背景には、深刻な「賃上げの二極化」があります。好業績の大企業が記録的なベースアップを打ち出すなか、人材獲得競争に勝つためには中小企業も同水準の賃上げを迫られています。しかし、エネルギー価格や原材料費が高止まりするなかで、多くの中小企業には賃上げの原資が不足しています。「賃上げしなければ人が流出し、賃上げすれば赤字になる」という、いずれを選んでも厳しい状況に立たされているのが実態です。

 この構造的な苦境は、特に人への依存度が高い「労働集約産業」に集中しています。飲食・宿泊、医療・福祉、建設、運輸といった業種では、業務の性質上「人がいないと成り立たない」ため、主要な従業員の退職や供給側の制約がそのまま事業の停止に直結します。価格決定力の弱いこれらの業種では、コスト上昇分を販売価格へ十分に転嫁できず、賃上げ格差の影響を一身に受けている状況です。

 人手不足倒産の増加は、私たちの社会サービスにも影を落としています。飲食店の時短営業や介護施設の受け入れ制限、物流の停滞といった形で、身近なサービスの縮小が地域経済の弱体化を招く懸念も強まっています。

 今後も賃上げ圧力は継続する見込みであり、東京商工リサーチは、賃上げ余力の乏しい小規模企業を中心にさらなる選別が進むことを警戒しています。賃上げは本来、家計を潤し経済を活性化させる柱であるはずです。しかし現実には、価格転嫁が進まない一部の現場において、企業の存続そのものを揺るがす深刻な要因となり始めています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)