企業の利益は誰のものか 同友会提言が問う「資本の再配分」

2026年04月22日 06:22

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内部留保をNPOへ 経済同友会が自社株寄附の簡素化など提言

今回のニュースのポイント

3団体による共同提言を公表:経済同友会、インパクトスタートアップ協会、新公益連盟の3団体は、企業とソーシャルセクター(NPO等)間の資金供与を円滑化するための共同提言をまとめました。

資本を社会へ流す仕組みを提示:企業の内部留保や自己株式を、社会課題の解決へと導くための具体的な制度設計を求めています。

積み上がる内部留保と社会課題の資金不足:2024年度末時点で企業の利益剰余金は638兆円と名目GDP(617兆円)を上回る規模に達する一方、NPOの多くは中長期的な人材投資に回せる資金が不足しているのが現状です。

「共助成長社会」への転換を目指す:資本主義のひずみを政府の「公助」だけで補うのは限界があるとし、企業の資金や知見を民間の課題解決へと流す「共助」の仕組みの制度化を狙います。

 企業の利益の使い道が、今改めて問われています。経済同友会などが公表した「企業とソーシャルセクター間の円滑な資金供与」に向けた提言は、過去最高水準に積み上がった企業の資本を、株主還元や内部留保として抱え込むだけでなく、社会課題の解決へと流す「第三の道」を具体的に提示するものです。

 提言の背景には、企業側とソーシャルセクター側の極端な「資金ギャップ」があります。2024年度末時点で、企業の利益剰余金は638兆円とわが国の名目GDP(617兆円)を上回る規模に達しており、保有する自己株式も42兆円まで増加しています。一方、貧困や若者の孤立といった課題に取り組むNPOなどの現場は、単年度の寄附や助成金に依存せざるを得ず、中長期的な人材投資や組織運営に必要な資金が確保しづらい構造的課題に直面しています。また、日本の企業の寄附金は2023年度でGDP比0.2%にとどまり、寄附文化の根付いた米国(GDP比2.0%)と比較して約10分の1という低い水準にあることも指摘されています。

 この流れを変えるため、提言では「資本の流路」を整える複数の施策が打ち出されました。まず、経済同友会が中心となり、企業の出捐金や寄附金を元手にNPO等へ資金供与を行う一般社団法人の「基金」を設立する構想を掲げています。あわせて、コーポレートガバナンス・コードを改正し、企業のパーパス実現に資する社会課題解決への貢献を資金配分(アロケーション)の検討項目として推奨することで、IR活動での可視化を促す方針です。

 さらに、法制度や税制の面でも踏み込んだ提案がなされています。公益目的に限って、取締役会の決議のみで自己株式の処分を可能にする法制化を目指すほか、寄附金税制を拡充し、課税所得の10%まで損金算入を可能にした上で、未消化分を5年間繰越控除できる新たな仕組みの導入を求めています。

 これらの施策の本質は、「資本の再配分」を制度として確立する点にあります。経済同友会が掲げる「共助成長社会」の実現には、公助(政府)の限界を認め、民間の知見と資金を最大限に活かすことが不可欠です。今回の提言が制度化されれば、日本の企業の在り方は、利益追求と社会貢献を分離した従来の形から、企業のパーパスそのものに社会価値の創造を組み込む「共助資本主義」へと大きく舵を切る可能性があります。

 企業の積み上がった利益を株主還元にとどめるのか、あるいは社会との「共助」のための資源として捉え直すのか。この議論の行方は、わが国の産業競争力と社会の持続可能性を占う、重要な試金石となるでしょう。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)