高速道路はなぜ渋滞するのか GWで見える交通の構造

2026年05月04日 16:54

画・車の運転に「自信ある」者の方が事故の経験が多い。事故経験4割。

なぜ車は止まるのか 渋滞の正体と「サグ現象」

今回のニュースのポイント

NEXCO東日本の調査では、高速道路の渋滞原因の約7割が、事故や工事ではない「交通集中渋滞」だとされています。その主な原因は「サグ(緩やかな上り坂)」での無意識な速度低下にあり、1台のわずかなブレーキがおよそ時速十数キロのペースで後方車両へ連鎖・増幅されることで、最終的に完全停止に至ります。国交省などの分析を基にした試算では、この渋滞による経済損失は日本全体で年間10兆円超規模にのぼるとされています。

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 ゴールデンウイーク(GW)の行楽地へ向かう高速道路。「順調に流れていたはずなのに、突然ブレーキランプの列が目の前に現れる」という経験は、ドライバーなら誰しもあるはずです。事故も工事も起きていない場所で、なぜ車列は止まってしまうのか。その正体は「誰かのマナー違反」ではなく、道路の形状と人間の心理が生む「構造的な連鎖」にあります。

 NEXCO東日本の調査によれば、高速道路の渋滞原因の約7割は、事故や工事ではなく「交通集中」によって自然発生するものです。その発生場所の約7割を占めるのが、「サグ部」や上り坂です。サグとは、下り坂から上り坂に切り替わる凹んだ部分を指します。ここでは勾配の変化と目の錯覚により、ドライバーが気づかないうちに速度を落としてしまうケースが頻発します。この「無意識の減速」こそが、大渋滞の起点となります。

 渋滞発生のメカニズムは、物理学における「波」の性質に似ています。先頭付近の車が少しアクセルを戻すと、車間距離が詰まった状態では後続車がより強くブレーキを踏み、そのさらに後ろがさらに強く……という連鎖が起きます。これが「減速波」と呼ばれる現象で、およそ時速十数キロのペースで後方に伝わり、最後尾では完全停止に至ります。特にGWは、交通量が道路のキャパシティの限界付近まで増えるため、この連鎖が極めて起きやすく、かつ解消しにくい「ギチギチに詰まった列」が形成されてしまうのです。

 この渋滞がもたらす影響は、個人のイライラだけでは済みません。国交省などの分析によれば、渋滞による損失時間は年間38.1億人時間にのぼり、そこから算出される経済損失は、日本全体で年間10兆円超規模に相当するとされています。これは約280万人分の労働力に匹敵する、巨大な社会的コストです。さらに、加減速の繰り返しによる燃料の浪費や、排気ガスの増加といった環境負荷も無視できません。

 私たちはこの構造的な渋滞をどう防げばよいのでしょうか。専門家が推奨するのは、「増やさない」ための運転です。  

 第一に、車間距離を十分(40メートル前後)にとることです。車間があれば前方のわずかな速度変化を吸収でき、ブレーキの連鎖を断ち切ることができます。  

 第二に、サグ部では「速度を一定に保つ」意識を持つことです。坂の入り口でアクセルを少し踏み増し、無意識な減速を防ぐことが、後ろに続く数千台の足を止めないことにつながります。

 渋滞は「誰かのせい」ではなく、道路の構造と交通量が生む自然現象です。しかし、その正体を知り、「詰めない・急がない」運転を一人ひとりが選ぶことで、GWの高速道路は今より少しだけ走りやすくなるはずです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)