ハウス食品決算、増収でも減益 カレー事業を襲うコスト高の現実

2026年05月12日 10:07

今回のニュースのポイント

ハウス食品グループ本社の2026年3月期決算は、売上高が3,169億円とわずかながら過去最高を更新した一方、営業利益は182億円と減益となりました。原材料価格や物流費、人件費の上昇に加え、米国大豆事業での競争激化と生産トラブルによる大規模な減損損失が利益を押し下げました。価格改定の効果で国内のカレー・スパイス事業は前期並みの利益を確保したものの、グループ全体ではコスト増を値上げだけで吸収しきれない局面に入りつつあります。今後は新たに導入する配当指標「DOE」や大規模な自己株取得など、資本効率を重視した経営への転換が焦点となります。

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 ハウス食品グループ本社の2026年3月期決算は、増収減益という厳しい結果となりました 。売上高は3,169億77百万円と過去最高を更新し、国内カレー市場大手としての売上規模は維持したものの、営業利益は182億46百万円(前期比8.8%減)となりました。価格改定の効果で国内主力製品は下期に回復傾向を見せました 一方で、物流費や人件費、販促費の構造的な上昇に加え、海外・外食事業でのコスト増も重なり、グループ全体では値上げだけで利益を確保することが難しい局面に入りつつあることが浮き彫りになりました。

 連結業績における純利益の落ち込みはさらに激しく、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比41.1%減の73億60百万円となりました。これは、米国大豆事業を中心とする海外食品事業で75億30百万円、外食事業で7億93百万円、合計83億22百万円の減損損失を計上したことが大きく響いています。経営指標として重視する投下資本利益率(ROIC)も4.1%(前期4.5%)に低下しました。

 主力であるカレー・スパイス事業では、スパイス原料や油脂、包装資材の高騰に加え、急激な円安による輸入原材料の調達コスト上昇が重なりました。価格改定により売上総利益率は維持できているものの、増加する販促費や人件費まで含めた営業利益率を押し上げるには至っていません。具体的な商品動向では、ルウカレーが下期の需要喚起策により通期の販売実績指数で101.8と持ち直し、ハウス食品の平均売価も268円(前年比23円高)で定着したものの、コスト増分を完全に相殺するには至らない状況が続いています。

 健康食品事業や外食事業もインフレの圧力を受けています。「C1000」などが伸長した健康食品事業は、ゼリー飲料の競争激化や原材料高により37.4%の減益となりました 。外食事業を担う(株)壱番屋も、客単価の上昇で売上は伸びたものの、米をはじめとする食材価格や光熱費の増加分を吸収しきれず営業減益となりました。海外では中国事業が2桁の増収増益と好調な一方、米国事業はインフレによる節約志向や生産トラブルが重なり、約10億円の営業赤字と大規模な減損を計上する苦境に立たされています。

 こうした収益環境の変化を受け、同社は利益配分方針を大幅に変更し、資本効率を意識した経営戦略へと舵を切りました。従来は総還元性向40%以上と年間配当46円以上を基本方針としてきましたが、政策保有株の売却と自己株取得を組み合わせ、新たに「DOE(純資産配当率)3%以上」および「原則累進配当」へと軸足を移します。当期の年間配当は70円とし、次期は100円の大幅増配と260億円を上限とする大規模な自己株取得を予定しています。今後は、強力なブランド力を維持しながら、事業ポートフォリオの再編と資本収益性の向上をどこまで両立できるかが、持続的な成長の鍵となります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)