今回のニュースのポイント
内閣府が29日発表した5月の消費動向調査によると、消費者態度指数は前月比1.4ポイント上昇の33.6となり2カ月ぶりに改善した。「暮らし向き」の改善が全体を牽引し、雇用環境の回復傾向が下支えした格好だ。ただ、1年後の物価見通しでは9割超が依然として上昇を見込んでおり、大型支出に直結する「耐久消費財の買い時判断」も低水準にとどまる。消費者心理に持ち直しの兆しが見え始めたものの、根強い物価高への警戒感が実際の消費拡大を抑制している。
本文
内閣府経済社会総合研究所が公表した5月の消費動向調査結果は、急速に冷え込んでいた家計の景況感に、ひとまず下げ止まりの兆しが見えたことを示しています。消費者マインドの総合的な指標である消費者態度指数は前月から1.4ポイント上昇して33.6となり、2カ月ぶりの改善を記録しました。3月調査では前月差マイナス6.4ポイントという記録的な急落で29.8まで落ち込み、一時的な急激な悪化を見せましたが、4月の反発を経て5月は33台半ばまで数値を戻した格好です。
3月の急落から2カ月連続の改善を遂げたことで、下押し圧力はいったん和らいだ可能性がありますが、年初2月の水準である39.7やコロナ禍以降の平均水準には依然として届いていません。現在の局面は、本格的な回復軌道に乗ったというよりは、最悪期を脱して「底打ちの可能性」を確かめる段階にあるとみるのが自然です。
今回の調査で最も特徴的な動きとなったのが、指数を構成する4つの消費者意識指標の中で「暮らし向き」が前月比3.0ポイント上昇の31.2と、群を抜いて大きな改善を示し全体の押し上げ役になった点です。そのほか、「耐久消費財の買い時判断」が前月比1.2ポイント上昇の24.4、「雇用環境」が0.9ポイント上昇の38.3、「収入の増え方」が0.5ポイント上昇の40.3となり、すべての項目で前月を上回りました。また、参考指標である「資産価値」も前月比3.5ポイントプラスの45.4と大幅に上昇しています。
こうした暮らし向きの実感や収入への見方が上向いた背景には、今春の賃上げの動きや人手不足の継続、それに伴う雇用不安の後退が、家計側の心理的支えとなった可能性が考えられます。指標の水準をみても、「収入の増え方」は40.3と2カ月連続で40台を維持し、「雇用環境」も38.3へと上昇して春先の悪化分をほぼ取り戻しつつあります。5月の回答構成(原数値)でも、暮らし向きが「悪くなる・やや悪くなる」と答えた世帯の割合が40.6%と前月から4.7ポイント低下しており、雇用や収入面での期待感がわずかながら家計へ好影響を与えている温度感が読み取れます。
しかし、心理面での持ち直しが見られる一方で、実際の支出行動に直結する指標の低迷は続いており、消費者が容易に財布の紐を緩められない実態も露わになっています。「耐久消費財の買い時判断」は3月の急落で26.0まで落ち込んだ後、4月・5月も24台という極めて低い水準にとどまっており、「今は買い控えたい」という慎重姿勢が根強く残っています。5月の回答構成(原数値)では、買い時が「良い・やや良い」と答えた世帯がわずか2.1%であるのに対し、「悪い・やや悪い」とする回答は計79.7%と全体の8割近くを占めました。
マインドの底打ち感は見え始めたものの、多くの家計が家電の買い替えや自動車の購入といった大型支出を先送りして様子見を続けており、心理の改善と実際の購買行動との間には依然として大きな距離があると言わざるを得ません。
家計がこれほどまでに慎重にならざるを得ない最大の阻害要因は、先行きの物価高に対する根強い不安にあります。消費者が予想する1年後の物価見通し(原数値)では、実質的に「上昇する」と見込む割合が93.5%に達しており、回答者の大半が物価上昇の継続を前提に生活を組み立てています。
さらにその内訳を見ると、上昇予想のうち「5%以上上昇する」との回答が56.0%と過半を占めており、物価上昇への強い警戒感が示されています。前月からの推移をみても、「上昇する」との見込みはほぼ横ばいである一方、「低下する」と予想した層は1.9%へとさらに減少しており、物価が下がると考える層はごくわずかです。名目賃金の上昇期待がいくら高まろうとも、物価上昇への警戒感が根強く残る中では、購買行動は支出拡大ではなく生活防衛へ傾きやすい状況が続いています。
本日の「労働力調査」や「有効求人倍率」にみられる堅調な雇用市場の勢いが、単なる期待感にとどまらず、家計の「生活が楽になった」という実感を伴う実質所得の改善へと繋がるかどうかが、今後の最大の鍵となります。企業側での賃上げの継続や人材確保の動きが進む一方で、家計側は食品やエネルギー価格、住宅関連コストの負担という現実に直面しています。
消費者心理は改善したものの、財布のひもはまだ固いという二面性を持った今回の結果は、インフレ懸念が続く限り、実際の消費拡大への道筋はなお不透明であることを物語っており、日本経済が内需主導の回復軌道へ乗れるかどうかは、賃上げ効果が実質所得の改善として家計にどこまで浸透するかにかかっています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













