再犯防止は「厳罰」だけではない 法務省が示した暴力防止プログラムの検証結果

2026年07月14日 16:51

法務省

法務省が公表した暴力防止プログラムの効果検証結果。再犯防止に向けた「教育・行動改善」の有効性と今後の課題が示された。

今回のニュースのポイント

法務省は保護観察所で実施している暴力防止プログラムの効果検証結果を公表しました。受講者は保護観察開始から2年以内の全再犯率が14.4%となり、非受講者の20.4%を下回りました。暴力再犯率も6.0%と非受講者の9.5%より低く、再犯防止への一定の効果が確認されています。一方で、時間の経過とともに学んだ内容を十分実践できなくなるケースも見られ、法務省はプログラム修了後のフォローアップ充実など制度改善の必要性も示しました。

本文
 犯罪や暴力事件が発生するたび、社会的に厳罰化を求める声は少なくありません。しかし、現代の刑事政策においては、刑罰だけでは十分ではないという考え方も根強く、刑罰を科した後に社会復帰した人が再び犯罪を起こさない環境をどのように整えるかという視点こそが重要視されています。法務省が今回公表した保護観察所における暴力防止プログラムの効果検証結果は、再犯防止に向けた「教育・行動改善」の取り組みが一定の成果を上げていることを客観的なデータで示したものとして注目されます。

 今回の検証では、受講の有無以外の要因が結果に影響を与えないよう調整し、保護観察中に暴力防止プログラムを受講した402人と、受講していない非受講者402人を統計的に比較しました。その結果、2年以内の全再犯率は受講者が14.4%に対し非受講者が20.4%となり、暴力行為による再犯率も受講者が6.0%に対し非受講者が9.5%にとどまりました。法務省の分析では、全再犯で約0.71倍、暴力再犯で約0.63倍に抑えられたとされており、暴力犯罪の同種再犯にとどまらず、罪種を問わない広範な再犯抑止効果が確認されています。

 このプログラムがもたらす効果の本質は、単に「暴力を振るってはいけない」と精神論的な指導を行うのではなく、暴力に至る思考や行動を変える方法を体系的に習得させる点にあります。受講者は全5課程のワークを通じて、自己の暴力につながる考え方の癖や、怒りが高まる場面を「危険信号」として自覚する訓練を重ねます。さらに、危機場面での具体的な対処方法や良好な対人関係のためのロールプレイを実践し、最終的に個別具体的な再発防止計画を策定します。刑罰による抑止にとどまらず、本人の認知や行動そのものを改善するアプローチとして位置付けられている点が特徴です。

 あわせて公表された児童虐待防止版のプログラムでも、同様に行動変容を促す試みの効果が示されました。受講者71人と非受講者99人を比較した追跡調査において、受講者の再犯率は1.4%と非受講者の4.0%を下回る結果となりました。対象人数が少ないため統計的な分析には限界があるとしながらも、質問紙調査による心理尺度の測定では、体罰肯定観や自己欲求の優先、被害的認知といった各下位尺度の評価得点が受講後に低下しており、加害者の心理状態の改善や再犯抑止に一定程度寄与している可能性が評価されています。

 一方で、今回の検証からは「プログラム修了後」における持続性の課題も浮かび上がっています。受講者への聞き取り調査では、保護観察が終了し時間の経過とともに、プログラムで学んだ危険信号への対応や具体的な対処策を日常生活の中で十分に実践できなくなるケースが確認されました。法務省はこれらの課題を踏まえ、プログラムの実施期間中だけでなく、修了後も継続して対処法の実践状況を確認するフォローアップの充実や、暴力抑止につながる考え方をさらに深める支援アプローチの改訂が必要であるとの認識を示しています。

 今回の検証結果が示しているのは、単なる処罰による抑止から、認知と行動変容を通じて再犯を防ぐ政策への比重が高まりつつあることです。経験や感覚ではなく、客観的なエビデンスに基づいて人間の行動改善プロセスを更新していく姿勢は、今後の刑事政策の実効性を左右する重要なテーマです。今後は対象者の特性に応じた長期間の追跡分析を重ねながら、より実効性の高い再犯防止施策へと発展していくかが注目されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)