今回のニュースのポイント
EV(電気自動車)や自動運転技術の進展に伴い、自動車に搭載される電子制御装置やセンサーは急速に増加しています。その一方で、あまり注目されない「ワイヤーハーネス(車載配線)」が、車両の重量や搭載スペースを左右する重要な部品となりつつあります。古河電気工業は、従来品より40%以上軽量化し、約50%以上の細径化を実現した耐熱車載電線を開発しました。背景には、EV時代に求められる軽量化と高密度配線という、自動車産業全体が直面する新たな課題があります。
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次世代の自動車、とりわけEVの進化を語る際、多くの関心は「バッテリー(電池)の容量」や「航続距離の伸長」へと向けられがちです。しかし、自動車の電動化がもたらした変化は、駆動源の置き換えにとどまりません。現在の車内では、モーターの精密な制御から、バッテリー管理システム(BMS)、高度運転支援システム(ADAS)、各種センサー類、 そして高度な自動運転に向けた多様な電子機器にいたるまで、電子制御機能の高度化と集約化が年々進んでいます。これらの電子機器が増加した結果、それらを相互に結び、電力や信号を送り届ける車内配線の重要性も高まっています。
一本一本の電線は細く軽量に見えますが、ワイヤーハーネスは車両全体に張り巡らされるため、車両全体の重量や搭載スペースに少なからず影響を与えます。この巨大な配線の束は、車両重量の増加を招くだけでなく、限られた車内空間を圧迫する物理的なスペース問題も引き起こします。つまり、どれだけ最先端の軽量バッテリーを搭載したとしても、配線類が重くかさばったままでは、車両全体の軽量化には限界が生じます。EVのさらなる電費改善や実用的なスペース確保を突き詰めるためには、配線そのものを細く、そして軽くすることが、開発現場における課題となっています。
こうした背景のもと、古河電気工業が開発した車載用極細径耐熱電線「ビーメックス®プラス-US」は、自動車産業が求める「軽さ」と「細さ」、そして「高い耐熱性」の両立を目指した製品として注目されます。同社は、JASO規格に準拠した従来の標準的な自動車用耐熱低圧銅電線(AESSX規格品・0.3SQ)と比較して、約40%以上の軽量化と約50%以上の細径化(電線断面積比)を同時に実現しました。さらに、極細化を進める上で障壁となるのが、過密な配線環境下で発生する「熱」の課題です。従来の細径塩化ビニル電線(CIVUS規格品)は耐熱温度が85℃にとどまり、高温環境への対応に課題がありましたが、本製品はCIVUSと同径ながら耐熱温度を125℃まで引き上げることに成功しました。
この「配線密度の向上」は、今後の自動運転の普及プロセスにおいて重要度を増すことになります。自動運転技術が高度化するにつれて、車両にはカメラやレーダーなどの各種センサー、電子制御ユニット(ECU)、外部と通信するアンテナなどが追加されていきます。これらのシステムは高度化・集約化が進むため、配線もまた過密化していきます。狭いスペースの内部に、いかに多くの配線を通し切るかという「高密度配線技術」の優劣が、今や次世代車のパッケージング(設計)の自由度を左右する要素となりつつあります。
電線を細くすることは、単なる部材の置換以上の付加価値を車両にもたらします。車両重量の低減は、電費や航続距離、設計自由度などの面で有利に働くことが期待されます。さらに、細径化によって配線ルートの設計が効率化されれば、従来は配線に占有されていたスペースを、乗員の居住空間やより大型のバッテリースペースへと有効活用することが可能になります。かつては機能の接続が主目的であった車載電線は、今や車両のポテンシャルを左右する設計部品へとその位置付けを変えつつあります。
EV競争の最前線では、バッテリーの素材開発や自動運転のシステムといった「目立つ領域」に光が当たりがちです。しかし、どれほど優れた主役が揃っても、それを支える神経系である配線やコネクター、絶縁材料といった基幹部品の技術革新がなければ、高度な電子車両は形になりません。部材レベルでの地道な技術革新が、完成車メーカーの次世代開発を陰で支えています。「見えない領域」での細径化・軽量化競争は、次世代EVの性能向上の実質的な行方を握る、もう一つの重要な戦場と言えそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













