今回のニュースのポイント
片山財務大臣は17日の閣議後記者会見で、密輸した金を溶かして形を変え、転売を繰り返す組織的な手口が依然として深刻との認識を示しました。税関では輸出入時の検査を強化しているほか、制度的な対応の必要性にも言及しました。なぜ金の密輸は繰り返されるのか、その背景を解説します。
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片山財務大臣は17日の閣議後記者会見において、組織的な金の密輸問題について言及し、密輸された金を溶解して形状を変更した上で国内転売を繰り返すなど、組織的なスキームが用いられている可能性があるとして、依然深刻な状況との認識を示しました。この密輸の背景には、消費税制度を悪用して不正な利益を得ようとするスキームがあると指摘されています。
典型的な構図としては、消費税が課されない、あるいは税率の低い国や地域で金地金を購入し、税関への申告を経ずに国内へ持ち込むことで輸入時の消費税支払いを回避します。その上で、国内で消費税込みの価格で売却し、消費税制度を悪用して不正な利益を得るスキームが問題視されています。さらに、これらの金が最終的に海外へ輸出される際、輸出企業が国内取引で負担した消費税について還付を受ける制度を悪用し、不正な還付金を受け取る事例も指摘されています。本来は輸出企業の税負担をなくすための仕組みですが、輸入時に消費税が納付されていない金が流通過程に紛れ込むことで、還付制度が悪用される事例が問題となっている実態があります。
今回の財務相発言で特に注目されたのが、密輸された金が国内市場へ流入する前に一度「溶かされる」という手口の巧妙化です。海外から持ち込まれた金地金(インゴット)を国内で溶解し、別の形状へと加工し直すことにより、元の金に刻印されていた製造元やシリアル番号などの個別の識別情報が失われます。この形状変更により流通経路の追跡が困難となり、密輸品かどうか判別しにくい状態で転売が繰り返されています。近年のインフレ懸念や円安を背景とした国内金価格の歴史的な高騰も密輸のインセンティブを刺激する要因となっており、過去には数十億円規模の脱税事案も摘発されてきました。こうした手口は、密輸品の流通経路の把握を困難にする要因の一つとみられています。
財務省税関によると、金地金密輸事件の規模は大きく拡大しており、公表された令和6年の1年間における摘発件数は493件、押収量は約1,218キログラムに達しています。航空機や航空貨物を利用したアジア圏からの密輸が大きな割合を占めており、事態の深刻さを受けて水際対策の大幅な強化が図られてきました。
最新の対策では、輸入時におけるX線検査や金属探知機を活用した検査の徹底に加え、輸出時においても流通経路の明確化を通じて「密輸品ではないこと」を確認するため、関係事業者に対して取引に係る詳細な資料の提出を求めています。片山財務相は会見の中で、こうした厳格な審査の強化に伴い、従来に比べて審査や検査に一定の時間を要する場合があると言及しました。しかし、不公平感の是正や貴重な税収の流出を防ぐという観点から看過できない重要事項であるとし、市場や事業者に対して理解を求める姿勢を示しました。
今後の焦点は、現行の運用強化にとどまらず、根本的な解決に向けた税制面での対応へと移る見通しです。過去の消費税法改正においては、密輸品と知りながら行った仕入れに対して仕入税額控除を認めない措置や、金地金の売買における本人確認書類の保存を控除の要件に定めるなど、一定の法整備が進められてきました。片山財務相は今回の会見で、現時点における具体的な制度改正についての予断は控えるとしたものの、制度的な対応が必要なのではないかという声が多い事実を認め、その検討も含めて関係機関と緊密に連携しながら対策に注力していく方針を明らかにしました。
政府は、消費税制度を悪用して不正な利益を得る密輸スキームへの対策として、税関による検査体制の強化に加え、制度面についても検討を進める方針です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













