今回のニュースのポイント
日立グループは、日立ヴァンタラの米国オクラホマ州ノーマン工場が、世界経済フォーラム(WEF)の先進工場「Lighthouse(ライトハウス)」に選出されたと発表しました。評価されたのは単なるAI導入ではなく、自社工場を「カスタマーゼロ」と位置付け、需要予測から在庫管理、製造、教育までAIを幅広く活用し、その成果を顧客向けソリューションへ展開する仕組みです。AI活用を実証から実装、さらに事業化へつなげる企業戦略の一例として注目されます。
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世界経済フォーラム(WEF)は、先進的なデジタル技術を大規模に活用し、具体的な業務成果を上げた製造・供給拠点を「Global Lighthouse Network」に選定しています。日立ヴァンタラの米国ノーマン工場は今回、生産性部門の拠点として選出されました。2020年に認定された大みか事業所に続き、日立グループとしては2拠点目の選定となります。ここで重要となるのは、今回の選出において国際的に評価されたのが、単に最新のAI技術を部分的に導入したことではなく、AIやデジタル技術を製造・供給業務の幅広い領域に組み込み、継続的な業務改革と成果の実証を伴う運営モデルを確立した点にあります。
この取り組みを支えるのが、日立の「カスタマーゼロ」という考え方です。自社拠点を最初の利用者として AIやデジタル技術を導入し、運用上の課題や改善点を検証した上で、顧客向けのソリューションへ反映します。自社で得た実践知や現場課題を顧客向けソリューションへ反映できる循環が、この戦略の特徴であり、実運用に基づくノウハウを提供できる点に強みがあります。
自社を対象にしたこの取り組みは、ノーマン工場において具体的な実績として示されています。公表された資料によると、商談データを基にしたAI需要予測の導入によって予測精度を約19%向上させ、提案依頼書(RFP)への対応時間を約26%短縮しました。さらに、これらのデータと連動した「グローバル在庫コントロールタワー」を構築したことで、在庫を約50%削減し、受注から出荷までのリードタイムを77%短縮したとしています。加えて、画像認識を組み合わせたリアルタイム作業指示システムにより、新人作業員の教育・研修期間を約80%短縮したとしています。AIが個別業務にとどまらず、サプライチェーン全体や人材育成まで横断的に活用されているのが特徴です。
これまで多くの企業では、AIやデジタル技術の導入において、PoC(概念実証)から本格運用への移行が課題とされてきました。技術的には可能であっても、実際の業務フローとのギャップを埋められなかったり、投資対効果が見えにくかったりしたためです。しかし、日立がノーマン工場で示したのは、AIやデジタル技術を日常の業務プロセスへ組み込み、在庫削減やリードタイム短縮といった経営指標の改善につなげた点です。AI活用の評価軸は、「どのようなAIを導入したか」から、「AIを用いて企業全体の運営モデルをいかに変革できるか」へ移りつつあります。
日立は今回のノーマン工場での成果を、次世代ソリューション群「HMAX by Hitachi(HMAX)」へと反映し、その機能をさらに高度化していく方針を打ち出しています。ここで得られたAIの活用モデルやサプライチェーンの最適化手法は、今後、鉄道(日立レール)などのグローバルな生産拠点へと展開される計画です。自社拠点で確認した成果や運営ノウハウを顧客向けソリューションへ反映する仕組みは、導入効果を具体的に示す上で一つの強みとなります。
近年は、日本企業の間でもAIを概念実証にとどめず、業務改革や事業開発へつなげようとする動きがみられます。日立の取り組みは、自社での活用によって得た知見を顧客向けサービスへ展開する一例です。AIの導入件数ではなく、業務成果と事業化へどこまで結び付けられるかが、今後の競争力を左右することになりそうです。今回の事例は、自社活用を起点とするAI戦略の一例と言えます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













