日銀、国債急変時の証券会社を分析 25年4月、調査先3割超で「2σ超」の損失

2026年09月25日 17:32

日銀5

日本銀行本店。日銀金融機構局の執筆者らは、証券会社による国債マーケットメイクと市場流動性の関係を分析し、2025年4月の相場急変時には追加的なリスクテイク姿勢の慎重化がビッド・アスク・スプレッド拡大の一因となった可能性を指摘した。(画像は資料写真)

今回のニュースのポイント

日本銀行は9月、証券会社による国債マーケットメイクと市場流動性の関係を分析した論考(日銀レビュー)を公表しました。日銀金融機構局の執筆者らは、平時には証券会社のリスク管理が国債市場の流動性に大きな影響を与える場面は少ないとする一方、2025年4月の相場急変時には、証券会社が追加的なリスクテイク姿勢を慎重化させたことがビッド・アスク・スプレッド(売り気配と買い気配の差)拡大の一因となった可能性を指摘しました。日銀にデータを報告する一部証券会社を対象とした分析では、2025年4月に円金利関連部門で通常の変動幅を大きく上回る損失を計上した先が増加し、金利リスク量を急速に削減する動きが確認されました。

本文
 日本銀行金融機構局の担当者は9月、証券会社の国債マーケットメイクビジネスと市場流動性の関係を分析した論考「証券会社による国債マーケットメイクビジネスの動向」(日銀レビュー)を公表しました。本レポートは執筆者個人による論考であり、日銀の公式な見解を示すものではありませんが、日銀にデータを報告する一部の証券会社から収集した内部データなどを基に、市場急変時における仲介機能とリスク管理の実態を分析した内容となっています。

 証券会社は国債市場において、買い気配と売り気配を提示して投資家の売買を仲介する「マーケットメイカー」の役割を担っています。その過程で一時的に自社勘定で国債ポジションを保有するため、金利変動リスクを計測・管理し、社内のリスクリミット内に収まるよう調整を行っています。

 本論考がケーススタディーとして取り上げたのが2025年4月の国債市場です。同月初めの米国による相互関税公表を受け、当初はイールドカーブ全体が低下しました。その後、市場のボラティリティーが高まるなか、満期の長い債券を手放す動きや投資家のポジション巻き戻しを伴って超長期ゾーンの金利が大きく上昇し、特に4月9日にはイールドカーブが急速にスティープ化しました。日銀にデータを報告する証券会社の円金利関連部門を対象とした分析によると、2025年4月には過去の月次損益の変動度からみて「2σ(シグマ)」を超える損失を計上した証券会社の割合が3割を超えました。「2σ」とは過去の月次損益からみて通常の変動幅を大きく超える損失であることを意味しており、この割合は2022年6月の現物・先物間価格差拡大時(2割弱)や2024年8月の米景気減速懸念時(約25%)を上回りました。なお、報告データの範囲は図表や証券会社ごとに異なる注記がなされています。

 こうした損失の発生や先行き不透明感を背景に、証券会社内部では損失限度枠への接近などが意識され、保有する金利リスク量を急速に削減する動きがみられました。各社の過去3年間のVaR(バリュー・アット・リスク)平均を100として指数化した金利リスク量は、4月9日前後に大きく上昇した後、急速に低下しました。

 市場流動性の指標となるビッド・アスク・スプレッドは、市場のボラティリティー高騰や投資家のポジション巻き戻しに伴って拡大しましたが、執筆者らはこうしたマーケットメイカー(証券会社)によるポジション削減の動きも、スプレッド拡大の一因となった可能性があると分析しています。

 一方で、通常時においては証券会社のリスクテイク余力が国債市場の流動性を抑制する場面は限定的であるとしています。2022年以降の金利上昇局面において、証券会社の国債保有残高はロング・ショート双方で拡大傾向にあり、在庫回転率にも大きな変化はみられません。また、社内のリスク上限を示すVaRリミットにも現時点では余力がある先が多いとされています。

 レポートでは、イールドカーブ・コントロール(YCC)解除後の2024年度以降、証券会社の円金利部門における収益水準が改善する一方で収益の振れ幅(標準偏差)も拡大していると指摘。マーケットメイク事業の収益性や安定性が、証券会社による経営資源の配分を通じて、中長期的な市場への流動性供給姿勢に影響を与える可能性があると結論づけています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)