日銀1.25%時代、企業負担はどうなる 借入金利0.25%上昇で年46万円増

2026年09月18日 17:20

画・TDB景気動向、5月が底か。急激な収縮に歯止め。後退傾向は下げ止まり。

帝国データバンクの試算では、企業の借入金利が現状から0.25ポイント上昇した場合、1社当たりの支払利息負担は年間平均46万円増加する。約16.8万社のうち約2700社が新たに経常赤字へ転落する可能性があるとしている。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

日本銀行は18日の金融政策決定会合で政策金利を1.25%程度へ引き上げることを決めましたが、依然として日本の金融環境を「緩和した状態」と位置付けています。一方、帝国データバンクが同日公表した試算によると、企業の借入金利が現状から0.25ポイント上昇した場合、1社当たりの支払利息は年間平均で46万円増加し、経常利益を平均1.9%押し下げる結果となりました。分析対象となった約16.8万社のうち、約2700社(1.6%)が新たに経常赤字へ転落する可能性があると試算されています。金利引き上げによる影響は業種によって異なり、企業における「金利ある世界」への対応力が問われています。

本文
 日本銀行は9月18日の金融政策決定会合において、政策金利(無担保コールレート誘導目標)を従来の1.00%程度から1.25%程度へ引き上げることを決定しました。日銀は政策金利を引き上げた後も、日本の金融環境については「緩和した状態」にあるとの評価を維持しています。実質金利が短中期ゾーンを中心になお低い水準にあるほか、金融機関の貸出態度も引き続き積極的であり、CP・社債市場での良好な発行環境が続いていることなどがその根拠とされています。植田和男総裁も会見において、利上げによって緩和の度合いは徐々に縮小しているものの、金融環境の過度な変化が企業活動に及ぼす影響には配慮する姿勢を示しました。

 しかし、マクロ経済の観点で「緩和的」と評される金融環境であっても、個々の企業経営の現場においては、すでに借入金利の上昇という具体的な経営コストとして変化があらわれ始めています。

 民間信用調査会社の帝国データバンク(TDB)によると、2025年度における企業の平均借入金利(調達金利、9月時点集計値)は1.34%となりました。前年度の1.20%を上回り、2019年度(1.36%)以来6年ぶりに1.3%台で推移する見通しです。コロナ融資の借り換えや返済が進んだこと、長期金利の上昇などを背景に、すでに企業が負担する金利の水準は切り上がってきています。

 こうした中でTDBは18日、2025年度(2025年4月〜26年3月)に決算を迎え、長短借入金を含む有利子負債と支払利息が確認できた全国約16.8万社(全業種)を対象とした新たな影響度試算を発表しました。

 同試算によると、仮に企業の借入金利が現行の水準から0.25ポイント上昇した場合、1社当たり年間平均で46万円の支払利息負担が増加します。これにより、経常利益は平均で1.9%押し下げられ、資金調達に伴う利息増によって経常損益が黒字から赤字へ転落する企業は、対象全体の1.6%にあたる約2700社にのぼる可能性があるとしています。なお、この試算は政策金利の引き上げによってすべての企業の借入金利が一律に0.25ポイント引き上げられることを意味するものではなく、決算期末以降の有利子負債の増減などを考慮せず、TDBが借入金利の上昇幅を設定して機械的に算出したシナリオ分析です。

 金利上昇に対する企業業績の感応度には、業種間で著しい開きが存在します。仮に借入金利が0.25ポイント上昇した場合、最も影響を大きく受けるのが「不動産業」です。不動産業では、1社当たり年間平均で約230万円の負担増となり、経常利益を平均5.4%押し下げる試算となっています。経常黒字から赤字に転落する企業の割合も3.6%に達します。これに対し、「建設業」における利息負担増は年間平均16万円、経常利益の下押し効果は1.4%にとどまり、業種によって企業が受ける影響は大きく異なります。

 一方で今回の調査結果からは、企業の「利上げ耐性」が緩やかに高まっている傾向も確認できます。借入金利が0.25ポイント上昇した場合に赤字へ転落する企業の割合は、2025年1月時点の試算では1.8%でしたが、今回の2026年9月調査では1.6%へと0.2ポイント低下しました。TDBの分析によると、コスト増加分を価格へ転嫁する動きが進んだことで収益力が改善した企業が多いほか、現預金を多く保有する企業では預金利息の収入増による恩恵も見込まれます。一律の「利上げ=即座に業績悪化」ではなく、企業側の対応力向上が試算値の改善にあらわれています。

 なお、TDBの資料では借入金利がさらに0.50ポイント上昇した場合のシナリオ(利息負担が年平均92万円増、経常利益3.8%減、約5500社・3.3%が赤字転落)についても試算が行われています。TDB資料では「今後、日銀により3カ月ごとの利上げが続く可能性もある」としていますが、日銀の植田総裁は18日の会見で「3カ月に1回」などの特定の利上げペースを念頭に置いているわけではないと説明しています。日銀の公式方針としても、今後の調整タイミングやペースは中東情勢やAI需要、為替リスクなどを毎回の会合で点検しながら決定するとしており、0.50ポイント以上の上昇ケースはあくまで信用調査会社が設定した金利シナリオに基づく試算として捉える必要があります。

 政策金利1.25%の局面を迎えても、中央銀行の評価としては緩和的な金融環境が保たれています。しかし、実際の企業経営においては、利上げが借入金利へと波及するにつれて支払利息が増加し、利益を削る要因となります。政策金利が引き上げられるなか、企業の実際の借入金利がどこまで上昇し、資金調達や損益にどう波及していくかが、「金利ある世界」における企業経営を見る重要なポイントとなります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)