「働き手」はどこから来るのか 65歳以上943万人、事業所の63.6%が転職者採用へ

2026年09月26日 19:47

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

働く人々のイメージ。2025年の65歳以上就業者は過去最多の943万人となる一方、厚生労働省の調査では今後3年間に転職者を採用する予定の事業所が63.6%に上った。日本の労働市場では、働く年齢の広がりと企業間の人材移動が進んでいる。(画像は資料写真)

今回のニュースのポイント

日本の人手不足を検証する際、「新しく市場に入る若い人が減っている」という人口問題の側面だけでは、労働市場の実態を捉えきれなくなっています。総務省の労働力調査(2025年平均)では65歳以上の就業者が過去最多の943万人に達し、全就業者の13.8%(約7人に1人)を占めました。一方、厚生労働省が9月25日に公表した2025年「転職者実態調査」によると、今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所は63.6%に上り、そのうち40.0%が「転職者を優先して採用したい」と回答しました。さらに国土交通省の8月調査では建設技能労働者の過不足率が1.3%の不足となるなど、現場でのミスマッチも確認されています。「高齢者の就業継続」「企業間の労働移動」「現場での技能人材不足」という異なる統計から、日本の労働供給の変化を整理します。

■「7人に1人」が65歳以上、943万人まで増えた働き手

 総務省が公表した人口推計(2026年9月15日現在)によると、日本の65歳以上人口は3624万人で総人口の29.6%と過去最高を更新しました。ただし、労働市場を見る上で注目されるのは、人口そのものの高齢化だけでなく、実際に働く高齢者の増加です。

 2025年平均の労働力調査によると、65歳以上の就業者数は前年から増加して943万人となり、比較可能な1968年以降で最多を記録しました。2004年以降22年連続の増加となります。就業者総数(6828万人)に占める割合も過去最高の13.8%に達し、働く人の約7人に1人が65歳以上という状況です。10年前の2015年(732万人、割合11.4%)と比較すると、211万人増え、構成比も2.4ポイント上昇しています。

 年齢階級別の就業率を見ると、65〜69歳で54.5%、70〜74歳で36.2%、75歳以上で12.6%となり、いずれも過去最高となりました。特に65〜69歳では、すでに2人に1人以上が就業しています。「高齢化によって一律に働き手が減っていく」という見方に対し、すでに存在する人口がより上の年齢まで市場にとどまり、労働供給を支えている実態が数値から確認できます。

■非正規が多数も、正規雇用の高齢者も増加

 65歳以上就業者の働き方の内訳を見ると、役員を除く雇用者586万人のうち、非正規の職員・従業員が446万人(76.1%)を占めており、パート・アルバイトが309万人と大部分を占めます。

 一方で、正規の職員・従業員として働く高齢者も140万人存在します。10年前(2015年)と比較すると、非正規の職員・従業員が178万人増加したと同時に、正規の職員・従業員も47万人増加しています。単に短時間のパートで人手不足を補うだけでなく、フルタイムや正規の立場でも高齢層の活用が進んでいることがうかがえます。

■事業所の63.6%が「今後3年間に転職者を採用予定」

 新しく労働市場へ入る世代だけに頼るのが難しくなるなか、すでに市場にいる人材を企業間で獲得・配置しようとする動きも強まっています。

 厚生労働省が9月25日に公表した2025年「転職者実態調査」(5年ぶりの実施)は、円滑な労働移動や労働力需給のミスマッチ解消に向けた雇用政策の基礎資料とすることを目的としています。本調査における「転職者」は、常用労働者のうち雇用期間の定めがないか1年以上の一般労働者(短時間労働者を除く)で、採用前1年間に他企業での雇用経験があり、2024年10月1日〜2025年9月30日に採用された人を指します。

 調査によると、今後3年間に「転職者を採用する予定がある」と回答した事業所は63.6%に上り、前回2020年調査の53.3%から10.3ポイント上昇しました。産業別では、情報通信業(72.6%)、建設業(70.9%)、運輸業・郵便業(69.4%)、製造業(68.3%)などで高い水準を示しています。

■「新卒優先」9.8%に対し、「転職者優先」が40.0%

 今後3年間に転職者を採用する予定がある事業所に対し、新規学卒者との採用優先順位を尋ねたところ、以下の結果となりました。

・「転職者を優先して採用したい」:40.0%(前回35.7%)

・「新規学卒者を優先して採用したい」:9.8%(前回12.3%)

・「どちらともいえない」:50.2%(前回52.1%)

 転職者採用予定のある事業所において、「中途・経験者を優先する」という姿勢が4割を占め、「新卒優先」の約1割を大きく上回っています。

 企業側が転職者の採用にあたって重視した事項(複数回答)では、「人員構成の歪みの是正」が48.3%で最多となり、「既存事業の拡大・強化」(39.5%)や「組織の活性化」(31.7%)を上回りました。さらに、転職者の賃金決定の際に最も重視した要素でも「これまでの経験・能力・知識」が38.4%で最多となっています。企業側が転職者の採用や処遇において、すでに培われた経験や能力を重視している状況が示されています。

■離職の理由と転職先を選ぶ理由

 一方、労働者側が移動する背景にはどのような意識があるのでしょうか。

 転職者が直前の勤め先を離職した主な理由は「自己都合」が81.3%を占めました。自己都合離職者に具体的な理由(3つまでの複数回答)を聞いたところ、以下の順となりました。

・「賃金が低かったから」:25.5%

・「会社の将来に不安を感じたから」:25.2%

・「満足のいく仕事内容でなかったから」:24.7%

 賃金の低さや企業の将来性、仕事内容など、複数の要素が重なって離職の判断に至っていることが分かります。

 ただし、転職者が現在の勤務先を「選んだ理由」(3つまでの複数回答)を見ると、最も高かったのは「仕事の内容・職種に満足がいくから」の40.2%で、「自分の技能・能力が活かせるから」が38.4%で続きました。現在の勤務先を選んだ理由にも、自分の技能・能力を活かせることや仕事内容・職種への満足など、複数の要素が表れています。

■企業間の移動が進んでも残る「ミスマッチ」

 働き手の就業継続や企業間の移動が進む一方で、現場レベルでは依然として人手が埋まらない分野が存在します。

 国土交通省が9月25日に発表した「建設労働需給調査」(8月分)によると、型わく工、左官、とび工、鉄筋工、電工、配管工の主要8職種全体における技能労働者の過不足率は1.3%の不足となりました。全国10の全地域で不足となったほか、足元で新たに人を募集する「新規募集」における不足率は6.0%に達しています。また、残業や休日作業で対応する「強化現場」の割合も4.0%へ上昇しました。

 前述の厚労省調査では建設業の70.9%が今後3年間に転職者を採用する予定としていますが、別の国交省調査では技能労働者の実質的な不足が続いています。人が労働市場内を動く仕組みや意欲が高まっても、需要が存在する現場と供給される技能人材の所在が必ずしも合致するとは限りません。ここに厚労省調査が調査目的として掲げる「労働力需給のミスマッチ」という問題が表れています。

■「総人口の議論」から「年齢と配置の議論」へ

 日本の人手不足問題は、生産年齢人口の減少という「絶対的な人数の減少」という文脈で語られることが少なくありませんでした。しかし、今週確認された複数の政府統計を重ね合わせると、現在の労働市場が直面する課題の別の側面が浮かび上がります。

・65歳以上の就業者が943万人に達し、半数以上の65〜69歳が働く

・事業所の63.6%が今後転職者の採用を予定し、その40.0%が転職者を優先する

・それでも建設現場など特定の技能職種では6.0%の新規募集不足率が生じる

 つまり論点は、「日本に何人の働き手が存在するか」という総数の問題にとどまりません。現在いる働き手が何歳まで働き続けるのか、どの企業や産業へ移動するのか、そして各人が持つ技能が需要のある現場へ正しく届いているのかという「年齢」と「配置(ミスマッチ)」の観点が重要になっています。

 先週公表された統計群からは、日本の労働供給を「人数」だけでなく、働く年齢や企業・産業間の移動、技能の配置という複数の側面から捉える必要性が浮かび上がります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)