今回のニュースのポイント
NEC、大鵬薬品工業、がん研究会、産業技術総合研究所、早稲田大学の5者は、量子計算技術を活用した次世代がん免疫療法の共同研究開発プロジェクトが、NEDOの大型実証事業に採択されたと発表しました。対象となるのは、がん細胞に特有の遺伝子変異に由来する抗原「ネオアンチゲン」。量子計算とAIを使ってネオアンチゲン候補を設計・最適化し、免疫学的な実験で検証した結果を再び計算モデルやAIに反映する創薬基盤の構築を目指します。実証期間は2026年9月から2029年3月までです。
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量子コンピューターを活用して、がん細胞を狙うための「目印」を計算で設計する――。NECなど5者が、次世代の創薬アプローチに向けた実証プロジェクトに着手します。
今回実証の対象となるのは「ネオアンチゲン」と呼ばれる抗原です。がん細胞に特有の遺伝子変異に由来するタンパク質断片(抗原)であり、正常細胞にはないため、がん免疫療法の標的として期待されています。
しかし、がん細胞の遺伝子変異は多種多様で、そこから生成されるアミノ酸の組み合わせは膨大です。さらに、ネオアンチゲンが体内で免疫反応を引き起こすには、特定の分子(MHCクラスII)への結合や細胞表面への提示など複数の条件を満たす必要があります。複数の要因を考慮しながら、膨大なアミノ酸配列の組み合わせから有望な候補を設計・最適化するには、複雑な計算が必要になります。
そこで活用されるのが、AIと量子計算技術です。
プロジェクトでは、AIによってネオアンチゲン候補に対する免疫応答を予測・評価し、量子計算技術をアミノ酸配列(ペプチドフランキング領域)の設計に活用します。膨大な配列の組み合わせから、多様かつ有望な候補を提示する手法の可能性を検証する狙いです。
この取り組みで重要なのは、計算して終わりにするのではなく、実験と連動させる点です。計算によって出されたネオアンチゲン候補を合成し、実際の免疫学的実験によって免疫応答への影響を検証します。そして、その実験データを再び計算モデルやAIにフィードバックしていきます。計算による候補の設計・最適化と実験による検証を双方向に連携させ、ネオアンチゲン候補の設計・評価基盤の確立を目指します。
研究開発にあたっては、NEC、大鵬薬品工業、がん研究会、産業技術総合研究所、早稲田大学の5者が有する量子計算技術、AI、創薬・医療、免疫学の技術と知見を融合させます。さらに計算インフラには、産総研のG-QuATが整備する量子・AI融合技術ビジネス開発基盤「ABCI-Q」が活用されます。量子計算単体ではなく、HPCやAIと統合した計算基盤を活用するアプローチです。
実証プロジェクトの期間は2026年9月から2029年3月まで設定されています。今回発表されたのは治療薬の完成ではなく、量子計算とAI、そして実証実験を掛け合わせた創薬手法が実際の現場で有効に機能するかどうかを検証する取り組みです。
がん治療そのものを量子コンピューターが行うわけではありません。膨大な配列の組み合わせから候補を設計し、実験結果を再び計算モデルやAIへ反映する仕組みが確立できるかが、今回の実証の焦点です。2029年3月までの実証では、量子計算技術をAIやHPCと組み合わせ、創薬研究の実際のユースケースに活用するアプローチの有用性を検証していきます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













