今回のニュースのポイント
厚生労働省が公表した2025年簡易生命表では、平均寿命は男性81.35歳、女性87.33歳となり、前年を上回りました。一方、生命表上で出生者の半数が生存すると期待される年齢を示す「寿命中位数」は男性84.13歳、女性90.17歳となり、女性では半数が90歳を超えて生きる社会が現実となっています。平均寿命だけでは見えない長寿社会の実像が浮かび上がりました。
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「人生100年時代」という言葉が定着して久しくなりました。しかし、厚生労働省が24日に公表した最新の簡易生命表が示したのは、遠い将来の予測ではなく、「90歳まで生きること」が既に多くの人々にとって現実の人生設計となっている日本社会の姿です。平均的な指標だけでは見えてこない、長寿社会の最新実態を読み解きます。
まず今回公表された基本数値を整理すると、2025年の日本人の平均寿命(0歳時の平均余命)は、男性が81.35年(前年比0.25年増)、女性が87.33年(前年比0.20年増)となり、男女ともに前年を上回りました。平均寿命の男女差は5.98年で、前年より0.05年わずかに縮小しています。また、65歳や75歳といった各年齢における平均余命についても、男女ともに全年齢で前年を上回る結果となりました。
しかし、今回の生命表を読み解く上で最も注目すべきなのは、「平均寿命」ではなく「寿命中位数」という指標です。
平均寿命は全員の生存年数を足して割った「平均値」であるため、若年層の死亡率などに影響を受けやすい性質があります。これに対し「寿命中位数」は、生命表上で生まれた人のうち、ちょうど半数(50%)が生き残ると期待される年齢を指します。2025年の寿命中位数は、男性が84.13年、女性が90.17年となりました。女性においては寿命中位数が90歳を突破しており、これは「生まれた女性の半数が90歳を超えて生きる時代」がすでに到来していることを意味しています。寿命中位数は平均寿命と比べても、男性で2.78年、女性で2.84年高くなっています。
実際に特定の年齢まで生きる人の割合を見ても、その傾向は顕著です。
生命表の生存率によると、65歳まで生きる人の割合は男性89.9%、女性94.5%、75歳までは男性76.0%、女性88.1%となっています。そして90歳まで生きる人の割合は、男性で26.7%(約4人に1人)、女性では50.8%に達しています。女性においては「2人に1人」が90代を迎える計算となり、90歳という年齢は一部の特別な長寿ではなく、社会の標準的な通過点になりつつあります。
こうした長寿化の進展は、日本の保健衛生や医療水準の高さを物語る一方で、社会や経済の仕組みに大きな再構築を迫ります。
公的年金制度の持続可能性や医療・介護提供体制の確保はもちろんのこと、個人レベルにおいても「老後資金の枯渇リスク(長生きリスク)」に備えた資産形成の重要性が一層高まります。定年退職後のセカンドライフが30年近くに及ぶことを前提とすれば、高齢期の就労機会の確保や、何歳になっても学び直しができる社会環境づくり、地域コミュニティでの支え合いの再設計など、あらゆる領域で前提条件の更新が必要です。
平均寿命が延びた要因に目を転じると、医療や感染症対策の動向が反映されています。
死因別の寄与度分析によると、悪性新生物(がん)、心疾患(高血圧性を除く)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの死亡率低下が、平均寿命を押し上げる要因として働きました。一方で、肺炎や老衰といった死因の増加は、平均寿命を縮める方向へ作用しています。高齢化に伴い、がんや急性疾患を克服して超高齢期を迎え、最終的に老衰や肺炎で生涯を閉じる人が増えているという、死因構造の質的変化もうかがえます。
平均寿命は、国の健康・衛生水準を測る重要な物差しです。しかし、これからの時代は「全体として平均何歳まで生きるか」だけでなく、「大多数の人が何歳まで生きるのか」という実態を捉え、その長い人生を支えるインフラをどう構築するかが問われます。今回の簡易生命表は、日本が名実ともに「人生90年時代」へ足を踏み入れたことを、揺るぎない数値で示したデータと言えます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













