今回のニュースのポイント
製薬大手5社の2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)連結決算は、5社すべてが前年同期比で増収となりました。海外市場での新薬・主力製品の販売拡大が成長を支え、武田薬品やアステラス、第一三共、エーザイでは円安も業績の追い風となった一方、塩野義製薬ではM&Aや事業承継が大きく寄与しました。一方で利益面を見ると、独占販売期間満了による既存薬の減収や研究開発投資の拡大、事業再編費用の計上など、各社の「成長の中身」には明確な違いが表れています。
■ 製薬大手5社そろって増収、海外市場が成長支える
国内の主要製薬大手5社(武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、塩野義製薬)が発表した2027年3月期第1四半期(2026年4~6月)の連結決算は、5社そろって前年同期比で増収を達成しました。
売上収益(売上高)の数字を見ると、武田薬品工業が前年同期比10.2%増の1兆2,199億円、アステラス製薬が同26.7%増の6,409億円、第一三共が同21.1%増の5,747億円、エーザイが同15.6%増の2,343億円、塩野義製薬が同63.7%増の1,633億円となりました。海外市場における新薬や主力製品の伸びが各社の成長を強力に支えています。
ただし、増収率の表面的な大きさだけで各社の収益力や成長性を一概に捉えることはできません。武田薬品やアステラス、第一三共、エーザイでは円安が業績の追い風となった一方、塩野義製薬ではM&Aや事業承継が拡大を牽引しました。「新薬そのもののグローバル販売が順調に利益へ結びついている企業」「為替による底上げ効果が大きい企業」「企業買収・事業承継によって規模が拡大した企業」など、その増収の中身には違いが存在します。
■ アステラス営業益95%増、エーザイは「レケンビ」成長
新薬・重点製品の海外展開が明確な利益拡大につながったのが、アステラス製薬とエーザイです。
アステラス製薬は、売上収益が26.7%増となったほか、営業利益が同94.9%増の1,845億円と約2倍に拡大しました。成長の軸となる重点戦略製品群の売上高が同43.2%増の1,603億円へと伸び、尿路上皮がん治療剤「PADCEV(パドセブ)」が36.0%増、加齢黄斑変性治療剤「IZERVAY(アイザーヴェイ)」が70.3%増など高い成長を示しました。主力の「XTANDI(イクスタンジ)」も18.7%増の2,766億円と順調で、為替の円安(売上約600億円、コア営業利益約255億円の押し上げ効果)も追い風となりました。
エーザイも売上収益が15.6%増、営業利益が同19.2%増の247億円と増収増益でした。アルツハイマー病治療剤「レケンビ」の売上収益が同26.7%増の293億円と拡大し、海外での販売国や投与方法の拡充が進んでいます。加えて、抗がん剤「レンビマ」が15.9%増の973億円、不眠症治療剤「デエビゴ」が37.9%増の189億円と伸長し、グローバル新薬が力強く業績を支えています。
■ 第一三共「エンハーツ」伸長、成長投資が利益圧迫
第一三共は、売上と利益の動向に特徴的な差が出ました。売上収益は抗がん剤「エンハーツ」や「ダトロウェイ」などのグローバル販売拡大と円安(売上押し上げ効果419億円)により、前年同期比21.1%増の5,747億円と大幅な増収となりました。本業の収益力を示すコア営業利益も同6.2%増を確保しています。
しかし、最終的な営業利益は同12.0%減の850億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同19.7%減の686億円と減益になりました。売上の鈍化によるものではなく、研究開発投資や販売費の増加に加え、事業再編に伴う一時費用が利益を圧迫した構図であり、同社は通期の売上収益予想を従来から600億円引き上げ、2兆3,400億円へと上方修正しています。
■ 武田は10%増収、それでも為替を除けばマイナス
今回の決算で、製薬業界が抱える課題を如実に示しているのが武田薬品工業です。売上収益は前年同期比10.2%増の1兆2,199億円、営業利益は同9.1%増の2,014億円と表面的には堅調に映ります。潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンタイビオ」が同15.4%増の2,683億円となるなど、主要製品群は伸びを示しました。
しかし、為替影響を除いた恒常為替レート(CER)ベースでは、売上収益は前年同期比0.5%減、営業利益は同3.1%減となります。米国で後発医薬品(ジェネリック)が浸透したADHD(注意欠陥多動性障害)治療剤「ビバンセ」など、独占販売期間満了の影響を受けた製品や成熟製品の減収が、新薬・主要製品の伸びを相殺しました。新薬の成長と既存薬の独占販売期間満了による減収という相反する要因がせめぎ合う実態を浮き彫りにしています。
■ 塩野義は純利益2.5倍、M&A・事業承継で姿変わる
大手5社の中で最も高い増収率を記録したのが塩野義製薬です。売上収益は前年同期比63.7%増の1,633億円、営業利益は同90.6%増の669億円、最終利益は同148.2%増の976億円となり、第1四半期として過去最高を更新しました。
ただし、この急拡大は単なる医薬品販売の自然増加にとどまりません。鳥居薬品の連結子会社化や、JTの医薬事業、ALS(筋萎縮性側索硬化症)等治療薬「エダラボン(日本名:ラジカット)」事業の承継など、相次ぐ企業結合や事業取り込みが大きな要因となっています。これにViiVヘルスケア社からのHIV治療薬関連ロイヤリティー収入の拡大(同25.3%増の801億円)や、抗菌薬「セフィデロコル」などの海外販売伸長が加わりました。自社新薬に加え、M&Aや事業承継、ロイヤリティー収入を組み合わせて収益基盤を拡大しています。
製薬大手5社はそろって増収となり、海外市場での新薬や主力製品の販売拡大が成長を支えました。武田薬品やアステラス、第一三共、エーザイでは円安も業績の追い風となった一方、塩野義製薬ではM&Aや事業承継が大きく寄与しました。為替影響を除けば減収となった武田薬品や、研究開発・事業再編費用が利益を圧迫した第一三共など、数字の中身には大きな違いが存在します。新薬をグローバル市場で成長させる力に加え、独占販売期間の満了を迎える既存薬から次の成長製品へ収益源を円滑に移せるか。各社の「海外で稼ぐ力」とポートフォリオ管理が今後の成長を左右することになりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













