開幕してから20年を超えたJリーグ。そこに参加する各チームを象徴するものの一つとして、クラブハウスがある。トップチームや下部組織などの活動拠点・練習場であり、運営の中心ともなるのがクラブハウスであるが、近時、その老朽化等が進み、建替えを実施・計画するチームが増えている。
今年1月には、セレッソ大阪の新しいクラブハウス「セレッソハウス」がオープン。大阪市の市街地から郊外のウォーターフロントへと移転し、総工費約5億円をかけてクラブハウスと3面のグラウンドを新設している。アスリート用の施設として100m2のロッカールーム、約50m2の浴室(温・冷浴槽)、試合時には対戦チーム用としても使用できる第2ロッカールームほか、5つの更衣室を備えており、複数のチーム・カテゴリーが同時に使用することができる仕様となっている。また、スタッフルーム、スポーツクラブ運営室に加え、一般も使用可能な2つの会議室も備えている。工事を手掛けたのは同じ大阪に本拠を置く松村組で、これまでも数々のスポーツ施設を手掛けてきた経験を活かした、ある意味でオーソドックスなクラブハウスとなっている。
一方、2月には大宮アルディージャのクラブハウス「オレンジキューブ」も竣工している。こちらは住宅メーカーのパナホーム が請け負ったもので、“地域と共に育つ「我家」”をテーマに建てられ、同社が戸建住宅事業で培った設計提案のノウハウを活かしている。例えば選手やスタッフの移動をスムーズにするための動線設計や、パナソニック<6752>製天井埋込形ナノイー発生機を設置して室内環境を快適に保つ工夫など、住宅らしさが随所に見られるのが特長だ。同クラブハウスは、地域貢献や社会に開かれたクラブの拠点と位置づけ、多目的会議室の貸出や授乳室もあり、さらに地域住民の交流の場や、災害時の避難所としても活用できるよう設計されているという。
施設を充実させて地域スポーツ振興に重点が置くか、スポーツに限らない地域貢献に重点が置くのか。新設された両チームのクラブハウスには、そのコンセプトに明確な差異が見て取れる。しかし、いずれのチームにも共通しているのは、「地域」への貢献である。これが上手く機能すれば、地域活性化の端緒となりうる。地元のチームがどういったコンセプトでどんな取り組みをしているのか、一度確認してみてはいかがであろうか。(編集担当:井畑学)