飲料メーカー各社が今夏の節電対策を発表している自動販売機。昨年来注目を集めるこの節電対策は、自動販売機の持つ社会的意義や自動販売機を用いての社会貢献活動にも注目を集めることとなった。その中の一つが、自動販売機を用いて実施されている募金活動であろう。近時普及を始めたこの募金型自動販売機は、社会福祉や地域貢献・団体の活動支援など、設置主体によって多種多様なものが展開されている。
自動販売機による売り上げが売上高の9割を占めるダイドードリンコでは、収益金の一部が国土緑化推進機構に寄付され、全国の緑化推進活動費用にあてられる「緑の募金」自販機を展開。その台数は全国で約3800台にも上るという。他にも東日本盲導犬協会へと寄付される盲導犬育成募金自販機や、難病と闘いながら病院のベッドで過ごす子供たちに夢や希望を届ける活動にあてられるギャラクシー募金自販機、共同募金会へと寄付され地域福祉の充実などにあてられる赤い羽根募金自販機など、数々の募金型自動販売機を展開している。
また、沖縄コカ・コーラボトリングでは、ヤンバルクイナ生態調査自動販売機を設置。ヤンバルクイナの保護支援を目的として売り上げの一部をNPO法人に寄付するだけでなく、ICレコーダー録音機を設置し、年間を通して録音したヤンバルクイナの鳴き声を調査・解析する活動に役立てられている。その他、四国コカ・コーラボトリングによる水難救済会支援自動販売機や、北海道コカ・コーラボトリングにより設置され、売り上げの一部が北海道環境財団や知床の自然環境保全活動に寄付される「おしらせ道ねっと」協定自動販売機など、コカ・コーラグループ各社が地域に根差した支援を行う募金型自動販売機を設置している。
飲料メーカーが独自に展開する自動販売機以外にも、様々な団体が募金型自動販売機を導入している。「大阪を明るくしたい」という思いから有志により設立されたOSAKAあかるクラブでは、売上金の一部が活動資金に活かされる自動販売機を各地に設置。大阪はもとより、奈良県や和歌山県、山口県にまで設置が広がり、コカ・コーラウエストやサッポロ飲料・サントリーフーズなども賛同し、協力をしている。また、ハートフル福祉募金では、「いつでも、だれでも募金のできる自動販売機で”プチ”ボランティア」と銘打ったハートフルベンダーを展開。この自動販売機は、商品ボタン以外に募金ボタンを備えており、飲料を買った後に募金ボタンを押すことで、押した回数分の金額が釣銭から差し引かれる仕組みとなっている。
中央共同募金会のデータによると、近年集まる募金額は減少を続けている。昨年のような大災害に見舞われた場合は別であろうが、平時における募金に対する意識が低下しているのかもしれない。一方で、募金型自動販売機は、企業にとって自社の社会貢献活動をアピールする手段となるものである。その為、平時においても特別に意識することなく利用できる募金型自動販売機は、企業と継続的支援を要する人との双方に有益なものと言えるであろう。省エネ自販機と同様に、今後最も普及が期待される自動販売機の一つではないだろうか。