男性の身だしなみの重要なポイントの一つに、「ヒゲの手入れ」がある。どんなに高価な洋服や小物でお洒落を装っていても、ヒゲの手入れが行き届いていないと片手落ち。ファッションとして、あえて狙った無精ヒゲならばともかく、正真正銘の無精ヒゲはいただけない。ましてや、剃り残しなどはもってのほかだ。
そういう意味で、男性にとっての電気シェーバーの選択は、その人のセンスを左右するものと言っても過言ではないだろう。「剃れれば何でもいい」というものではない。しかも、毎日使うものだから、日々のパートナーとしてふさわしいものを、自分のスタイルやヒゲの質に合ったものを慎重に選びたいものだ。
とくに昨年は、電気シェーバーのトレンドが劇的に変化した年だった。これまでの電気シェーバーは、何が何でも「深剃り」がウリだったが、昨年登場した最新機種は一味違う。深剃りに加えて「肌への優しさ」や「デザイン性」がクローズアップされたものが、各メーカーから続々と発売されたのだ。
この背景には、消費者が今までよりも「肌にも負担をかけない」「ヒゲをデザインできる」というポイントをシェーバーに求める声が増えたことにあるようだ。敏感肌の男性にとって、深剃りであればあるほど肌のダメージも深くなる。ヒゲがきちんと剃れるのは大事だが、肌と引き換えにはできない。また、近年は日本の職場でもヒゲスタイルが認められてきたこともあり、ビジネスマンにとっても個性を表現する方法の一つになってきた。
このような状況を反映したシェーバーが、2012年は続々と登場したのだ。
まず、肌に優しいシェーバーで注目したいのが、パナソニック のラムダッシュ カミソリシェーバー。T字カミソリの特性を取り入れたシェーバーで、余計な力を肌に伝えにくい製品になっている。ヒゲの扱いにこだわりを持つT字カミソリのユーザーの乗り換えを狙った野心的なシェーバーだ。ウォータースルー機能があり、清潔に保てるのも人気の理由の一つとされている。
次に、デザイン性のあるシェーバーで注目されているのは、12年7月に登場した「フィリップス センソタッチ3D RQ1285CC」だ。こちらはヘッド部分を「ヒゲスタイラー」に付け替えることによって、トリミングとデザインができることが特徴となっている。実はこの製品、オープン価格2万5000円前後のフィリップス最上位機種。ターゲットとなるのは可処分所得の高い30代後半からの世代で、ヒゲをファッションの一部と考えている世代だという。特筆すべきは、ヒゲスタイラーが2500~3000円の価格で単体別売りされ、従来のシェーバーでも使用できるようになったことだ。まさに消費者の視点に立った製品と言える。
多くの男性がファッション性を重要視する時代になり、常に身だしなみ気を使う中高年男性も増えてきているようだ。そのような層は、髭を自己表現のための最大武器として捉えている人も多いようで、シェーバーにもかなりこだわる傾向にあるという。約600億円と言われている男性用シェーバー市場だが、人口比率の高い中高年層の潜在的な需要を掘り起こすことができれば、まだまだ成長する余地があるだろう。(編集担当:藤原伊織)