ソーシャルゲーム業界の動向を探る

2012年12月12日 09:29

 JOGA(日本オンラインゲーム業界)が行った市場調査によると、ソーシャルゲームの市場規模は2,794億円であるということが、今年の7月に発表された。(2011年の市場:シードプランニング調べ)前年比約254%という急激な成長で、今後もこの傾向は続くことが予想されるとした。

 大手プラットフォーム会社のソーシャルゲームの売上はDeNA、グリーの両社がそれぞれ「モバゲー」、「グリー」をオープン化した以降、急激な伸びを見せているのが特徴的だ。売上はこの2プラットフォームには敵わないが、人気ソーシャルゲームを配信する子会社を持つ「アメーバー」のサイバーエージェントも着実にソーシャルゲームの売上を伸ばしている。

 だが、今年の5月に「コンプガチャ」が景品表示法に抵触するという見解を消費者庁が発表し、業界関係者は即座に対策を打たなければならなくなってしまう。DeNAとグリーは廃止する方針をすぐに打ち出し、それに続く形で他のプラットフォーム会社も廃止を公表することとなった。

 市場が急速に冷え込むなどの予想もあった中、先日発表された大手の7-9月期の決算は、「コンプガチャ」問題がどう影響したかで、明暗が分かれる結果となった。DeNAはメジャーな人気コンテンツを中心としたゲーム事業が伸び、同問題の影響はない形で連結純利益は117億円と、前年同期比70%という結果を出した。一方のグリーは純利益が前年同期比4%減の90億円で、上場以来初の減益となった。これは、新作ゲームの投入遅れなど、同問題の対応が遅れてしまった影響が大きかったと見られる。また、CMも話題となっているサイバーエージェントは、ソーシャルゲーム事業の拡大でメディア関連事業が好調だったこともあり、純利益は85億円で前年同月比16.4%の増益だった。

 「コンプガチャ」の問題は一応収束した形になったかもしれないが、課金システムそのものが無くなったわけではない。過激すぎる課金システムがなくなっただけに過ぎず、未だに「ガチャ」はあるし、ポピュラーな「月額課金」や「アイテム購入」などももちろん存在している。そして、現在も新たな課金システムは誕生している。

 そんな中、業界は社会の声に応えるべく、課金システム対策に動き出している。9月に行われた東京ゲームショウでは、ソーシャルゲームの出展が従来よりも大幅に増加した。それに伴い、ゲーム自体の有料性など、課金システムも様々な方法が提案されている。そして、11月にはソーシャルゲームの健全な環境つくりを目指す団体「ソーシャルゲーム協会(JASGA)」がグリー、DeNAらプラットフォーム6社、ゲーム関連団体、サードパーティ各社などにより発足した。同協会は「コンプガチャ」や「リアルマネートレード」などのガイドラインを策定し、自主規制を行い、他にも啓発活動なども行っていく方針だ。また、関連省庁との意見交換なども行っている。

 ソーシャルゲーム業界が厳しい社会の目に晒されるのは、これで終わりではない。未だに射幸心をあおるゲーム性への批判は止まってはいないのが現実だ。だが、一方ではこの市場への魅力が失われたわけではないということは、NTTドコモ が12月からソーシャルゲームの配信を行うという、プラットフォームとしての参戦を表明したことからも証明できる。「LINE」で一気にSNSの中心的存在となったNHN Japanらも加わり、表では手を取り合っていても、実際は群雄割拠の時代に突入している。本当に確かなビジネスモデルなのか、それともただ終わってしまう流行なのかは、2013年の動向でしっかりと見定める必要がありそうだ。(編集担当:加藤隆文)