新たな需要を創出したボートのレンタルサービス

2011年05月30日 11:00

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取材に応じてくれた会員制マリンクラブ「Sea Style」の仕掛人でもあるヤマハ発動機国内マリン営業部の竹長部長(新西宮ヨットハーバーにて)

 ソニー損害保険が、今年の1月に新たに成人となった若者を対象に実施した「新成人のカーライフ意識調査結果」によると、新成人の約3割が「若者の車離れ」を自覚しているという。特に都市部ではその傾向が顕著に表れており、自動車への関心もますます希薄になってきているようだ。そんな中、必要な時だけ車を使うカーシェアリングサービスがすでに定着してきている。これまでは、主婦層が買い物の脚代わりに利用するケースが多かったようだが、最近では人気の輸入車や高級車など、憧れだった車や目的に合った車両を選択して、ドライブを楽しむ人が増えているという。

 「”買う”より”借りる”」この流れは自動車だけに限ったことではない。今までは富裕層の娯楽とされていたマリンレジャーにも、このトレンドは確実に浸透しつつあるようだ。ヤマハ発動機は、2006年より始めた会員制マリンクラブ「シースタイル」において、ボートを低料金でレンタルできるサービスを開始している。船舶免許さえ持っていれば、会員になるだけで、いつでも、140にも及ぶ全国のマリーナにて、様々なタイプのボートの中から目的に合う船を選び、マリンレジャーを楽しむことができるという。一隻数百万円もするボートを数千円からレンタルでき、さらにグループで借りれば一人当たりの料金はかなり格安になるとあって、若者や女性など今までマリンレジャーとは無縁だった層の会員も増えているという。

 また、同クラブでは、もっと多くの人たちに海遊びの楽しさを体験してもらう目的で、旅行会社などと協力し、ユニークなクルージングツアーを企画したり、船舶免許を取得するための勉強会を開催したりするなど、マリンスポーツ人口の裾野を広めるための活動に余念がない。

 シースタイルの仕掛人でもあるヤマハ発動機国内マリン営業部の竹長部長は、我々の取材に対し、「最近では、様々な目的でボートをレンタルする人が増えています。旅先でちょっとクルージングしてみたいという方、釣り仲間で集まってフィッシングボートを借りて海釣りへと出かける方、週末にお子様と一緒に海遊びを楽しんでおられる方、有名な名所を海上から違った視点で見てみたいという方、そして、ボートの購入する前にまずはレンタルボートで練習したいという方など、会員様が個々のスタイルでマリンレジャーを存分に楽しんでおられます。我々は、このシースタイルという仕組みを通して、これまで少し敷居が高い印象を持たれていたマリンスポーツの楽しさと気軽さをより多くの方に伝えていきたいと考えています。そして、体験機会を創出してくことで、中長期的に見た需要創造にもつなげていきたいですね」と語ってくれた。船舶免許も年々取得し易いメニューやバリエーションが増えてきたことが追い風となり、現在の同クラブの会員数は1万4千人まで成長している。しかし竹長氏の頭の中には、10年後には5万人規模の会員制マリンクラブにしていくための青写真が描かれているようだ。

 かつてレンタルビジネスといえば、「経済的」「便利」「合理的」などのワードしかなかったように思える。しかし、そこに「楽しさ」「自分らしさ」が求められるようになってきているということは、レンタルというビジネスが次のステージへと進化し、成熟してきている証なのかもしれない。