「EV自動車」や「スマートハウス」などの言葉が浸透しはじめ、いよいよ低炭素社会に向けての取り組みも本格化してきたが、スマートな未来社会を構築するために必要となるのが、スマートグリッド(次世代送電網)の実現、いわゆる電力の「見える化」だ。スマートグリッドとは、現在のIT技術を駆使し、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御することで最適化を図るという壮大な取り組み。世界は大きくこの流れに舵を取り始めており、日本でも東京工業大学・東京電力・東芝・日立製作所などが共同で「日本版スマートグリッド」の実証実験を2010年度から開始して以来、大手自動車メーカーや家電メーカー、ハウスメーカーなど様々な業種からの参入が相次いでいる。
欧米で導入が進むスマートグリッドの構築において、送電網や配電網の自動化と共に不可欠とされているのが、通信機能を備えた次世代型電力量計「スマートメーター」の設置だ。日本国内においても、3.11以降、深刻化する電力供給不足の解消ためにも、スマートメーターというインフラを早急に整備し電力を効率的に抑える必要があり、経済産業省も今後5年でスマートメーターの普及を急ぐと宣言している。
そんな中、スマートメーター向けの規格に対応した無線通信LSIの開発に実績のある、ロームグループのラピスセミコンダクタが先日、160~510メガヘルツの小電力セキュリティ無線局と、特定小電力無線局用の無線通信LSI「ML7344J」を開発したと発表した。ガスメータや水道メータに代表される無線検針やセンサ間の連動が必要な機器においては、数秒で通信有無を確認し、電波が無ければスリープ状態に移行するという動作を繰り返す必要があるため、電池寿命のほとんどを間欠受信動作に費やしている。そのため長期間の電池駆動は困難とされてきたが、同製品では業界トップとなる低受信電流 5.9ミリアンペアを実現し、さらに業界最短の0.8ミリ秒内の高速電波チェック機能を搭載。従来商品に比べ電波監視時の消費電流量を10分の1以下に抑えることに成功し、バッテリー機器の大幅な長時間寿命に貢献するという。既にサンプル出荷を開始しており、2013年9月より量産出荷を開始する予定。日本国内のみならず、欧州や中国の規格に対応した製品も順次サンプル出荷していく方針だ。このような電力消費を抑える最新のテクノロジーが、次世代の社会におけるスタンダードになるものと期待されている。
進行する地球温暖化を抑止するためには、先進国のみならず、世界全体が効率的なエネルギー利用に向けての道を歩み始めなくてはいけないだろう。相次ぐ原発停止により逼迫する電力事情を抱える日本だからこそ、技術力でその問題を克服し、さらには最先端スマートグリッドの構築に向けて世界を牽引する存在になって欲しいものだ。世界からもリスペクトされる日本の部品屋の技術力があれば、エコ先進国としての地位を確立できるのではないだろうか。(編集担当:北尾準)