2013年電力業界、スマートグリッド定着に向けての動きを本格化

2013年01月04日 09:50

  2011年の震災以降、一気に注目の高まった「スマートグリッド」。しかし、言葉だけが先行してしまっている感も否めない。

  スマートグリッドは、2009年にアメリカ大統領に就任したバラク・オバマ氏が、省エネ対策により250万人のグリーン雇用創出構想を打ち出した環境エネルギー経済政策「グリーン・ニューディール政策」の柱として掲げたことから一躍注目を浴びることとなった。

  日本語では次世代送電網と訳されることの多い「スマートグリッド」。従来の送電線は、大規模な発電所から一方的に電力を送り出す方式で、需要のピーク時を基準とした容量設定なのでムダが多かったり、送電網自体が自然災害などに弱かったり、何かトラブルが起こると復旧に手間取るケースも多かった。とくに米国では、センサやネットワーク制御機能などが未整備な電力網が多く、それが停電などの障害時における復旧時間を長期化させる要因にもなっている。

  そこで、専用の機器やソフトウェアを送電網の一部に組み込み、送電の拠点を分散し、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網を構築しようというのがスマートグリッド構想だ。

  しかし、オバマ氏がスマートグリッドを打ち出した当時、日本での関心は非常に薄かった。なぜなら、日本の電力網は既に高度な通信機能を備えており、補修や機能増強なども継続的に行なわれ、日本の電力網は「世界で最も堅牢で安定している電力網」と評されていたからだ。専門家の中にも「日本はすでにスマートグリッド」という声も多かった。

  ところが、11年の東日本大震災をきっかけに、原子力発電所の停止による電力不足などが問題化し、日本も他の海外諸国と同様に電力供給の不安定さを抱えていることが露見したことから、スマートグリッドに対する関心が急に高まった。

  そして、日本政府が電力需給の安定化に向けて打ち出したアクションプランのひとつが、企業や家庭の電力使用量をリアルタイムに収集できるスマートメーターの普及である。政府は今後5年の内に電力需要の8割をスマートメーターで管理できるようにする目標を掲げている。これが実現すると、全国レベルで電力使用量を効率的に抑制するとともに、電力が不足する事態にも迅速かつ柔軟に対応できるようになるだろう。

  具体的な用途としては、例えば今後、何らかの理由で電力が不足し、計画停電を行なう必要に迫られたような場合でも、病院や信号機だけを除外するということも可能となる。また、綿密な電力制御を自動的に行うことができるので、未然に停電を回避することも可能となる。

  アメリカをはじめ、世界規模でスマートメーターの設置が広がっており、今後10年以内には全世界で10億台以上のメーターが稼働すると見込まれていて、その将来性に対して産業界からも大きな期待が寄せられている。

  最も利用者の多い東京電力 では、14年度からスマートメーターの設置を本格的に開始し、18年度までに1700万台、23年度までに2700万台の設置を完了する計画を立てており、これに伴って、1000万台以上のスマートメーターを連携させる通信ネットワークを構築・運用できる開発会社の公募を開始した。同社では、13年2月まで提案を受け付けるが、すでにNTTグループをはじめ、大手のシステムインテグレータ数社が名乗りをあげているとみられており、その中から選ばれた開発会社とともに4月までに仕様を確定して、5月から開発作業に入る予定だ。

  当然のことながら、東京電力以外の電力会社も同様にスマートメーターの設置計画を進めていくが、最大手である東京電力の開発動向や仕様の詳細は、その後の日本の電力供給の指針ともなるため、大きな注目を集めている。(編集担当:藤原伊織)