約80%を海外に依存しているエネルギー供給。こうした状況を受けて再生可能エネルギーが認知度・注目度共に高まっているが、普及が進むのは太陽光発電ばかりであり、他のエネルギーの利用はなかなか進んでいないのが現状である。中でもバイオマスエネルギーは、度々政府のエネルギー戦略によって加速を図るとされてきたものの、思うように普及が進んでいない。
装置やプラントといったバイオマス利用技術や、バイオマス由来製品に関しては、比較的市場が拡大しつつある。富士経済の調査によると2015年のバイオマス利用技術市場は2010年度比211.2%、バイオマス由来製品は212.0%となっている。しかし、金額にすると合計しても2015年度予測で2579億円と決して大きいとは言えない規模である。
さらに普及の足が鈍いのはバイオマス由来電力である。前出富士経済の調査によると、2010年度のバイオマス由来電力市場は、394.7万MWhの211億円となっている。これが2015年度の予測では、発電量が2010年度比105.9%の418.0MWh、金額では同108.1%の228億円である。他の再生可能エネルギーによる発電と比較すると、横ばいとも言える程度の推移である。
こうした中、王子HD<3861>の100%子会社である王子グリーンリソースが、宮崎でのバイオマスボイラー設置による発電事業に約85億円投資すると発表した。今回設置するバイオマスボイラーでは、豊富な森林資源を有する宮崎県を中心とした九州中南部地域の山林未利用材を主な燃料として利用する予定で、発電した電気は全量外部へ販売する。設備能力はボイラー発生蒸気量で100T/h、発電能力は25MW。売電量は年間で一般家庭40000戸分相当にあたる約150GWnとなり、年間約40億円の売上高を見込んでいる。現在のバイオマス由来電力市場の規模からすると、大規模な投資と言えるであろう。
未活用の廃棄物を燃料とするバイオマス発電は、廃棄物の再利用や減少に繋がるだけでなく、国内の農山海村に存在する資源を活用することで自然循環機能を維持し、持続的発展を図ることが可能な発電方法である。一方で資源が分散しているため、収集や運搬等にコストがかかる上、小規模分散型の設備になりがちであるという課題があるとされている。しかし、一つの発電方法に依存すること、そして発電場所の偏在が大きな弊害となることは先の震災で誰もが実感したことであろう。むしろ地産地消ともいえる小規模分散が進むことはリスクヘッジともなり、メリットと言える。スマートグリッドが本格的に導入されれば、さらにその有用性は増すのではないだろうか。(編集担当:井畑学)