「スマートテレビ」の可能性と国内需要の問題点とは

2011年03月09日 11:00

 既にソニーから「Google TV」で商品化され、次世代テレビとして注目を浴びる「スマートテレビ」。実際、業界内ではどのような動きを見せているのだろうか?

 今年1月にアメリカ・ラスベガスで行われた世界最大級の家電見本市『International CES2011』では、タブレット、スマートフォンと並び、人気を集めていたのが次世代型テレビとして注目を浴びる「スマートテレビ」だ。この「スマートテレビ」というのは一体何であろうか? 既に商品化され、北米では「Google TV」の名称でソニーより販売されているが、従来のテレビの機能にインターネットコンテンツ(映像・音楽配信など)をオンデマンドで受信・再生ができ、SNSなども楽しむことできるテレビということが一般的に知られている。当然インターネットとの接続は前提であるが、これは新しい概念ではない。テレビではすでに「アクトビラ」や「You Tube」をテレビで楽しめるための機能を搭載したモデルもあり、ネット上のコンテンツとの結び付きはある。しかし、テレビで映される動画の主役はテレビ局が制作する番組であり、インターネットTVと言ってもユーザー側がネット上の全てのコンテンツを選択する事はできない。しかし、このスマートテレビはその概念を根本から覆す。要はユーザーが自分の意思で好きなコンテンツをチョイスし、テレビの中でそれを展開させることができるのだ。

 「スマートテレビ」というトータル的な呼び名は韓国のサムスンやLGが積極的に広めようとしているのだが、これは「スマートフォン」からの流れで、日本でもかなり定着しつつある。”賢い”という意味の「スマート」は「スマートハウス」や「スマートグリッド」のように、環境配慮型の住宅などでも使われており、グローバル・スタンダードな単語として受け入れやすいものだが、CES会場では、日本の家電メーカーは敢えてその呼び名として同様の製品を並べていない。前述のソニーもそうだが、パナソニックは「VIERAタブレット」を発表し、ちょっと違ったスマートテレビの方向性を打ち出した。

    その方向性は、パナソニックが従来のクラウド型インターネットサービスの「VIERA CAST」をさらに大きく進化させ、「VIERA Connect」を今春より開始し、プラットフォームをオープン化する事で、アプリケーションの増加やサービスの拡大を図るという方針に見える。これは、テレビとインターネットの間に「VIERAタブレット」を置く事で直観的な操作で、テレビの画面を荒らす事なく、インターネットを楽しめるもので、スマートテレビの方向性においても面白い試みである。言わばリモコンの発展形で、画面に映し出す前に重要なインターフェイスの役割をしてくれる。

 このように様々な可能性を秘めた「スマートテレビ」だが、楽しめる環境を国内で早急に整備しなければ、需要は見込めない。専用の動画配信やそれに伴うアプリケーションはパナソニックのような試みやサードパーティの登場によって、急速に広まる可能性はあるものの、もうひとつの要素として、違法にならないインターネット上でのテレビ番組配信要望の声を拾えるかどうかもの重要だ。現状では難しいこの問題をどこに着地させるか今後の推移に注目したい。あいまいな状態はスマートテレビの普及の足かせとなり、アメリカや韓国から遅れることになる。