消費低迷などにより、飲料業界を取り巻く環境は決して良い状況ではない。消費者の「家庭回帰」・「節約指向」や流通業界の「プライベートブランド」との競争激化が各社の収益を落とし、自動販売機もその影響を受けている。だが、自動販売機は各社にとって大切な販売チャンネルであることは間違いない。その理由に価格安定性に優れていることや、販売商品をメーカー主導で決定できること、そして自動販売機そのものが広告媒体として活用できることなどが上げられる。そんな中、売上高の約90%を自動販売機が占めるダイドードリンコ の個性的なビジネスモデルは、飲料業界でも注目を集める。
業界全体でのコーヒー飲料の比率は約25%(ダイドードリンコ調べ)だが、同社の販売比率は業界平均を大きく上回る50%以上に達する。ただ利益率が高い製品だからラインナップを多くしているのではなく、消費者の嗜好に合わせて、オリジナルからカテゴリーとして完全に確立した微糖系・ブラックまで、味を追求する製品開発を徹底的に行い、より細分化したメニュー体系を作りだした結果だ。また、自社工場を持たないファブレス体制によって、製造は100%全国の協力工場で行い、物流に関しては配送センターに委託するという独特のスタイルを持つ。そして回収は現金を主体としているので、収支ギャップが常に小さく、安定したキャッシュ・フローを実現している。その結果、製品や自販機の開発と高品質なオペレーションに経営資源を集中させることが可能になる。
では、現在の各飲料メーカーの自販機戦略はどうなっているのだろう。日本コカ・コーラは2011年1月から標準機を新デザイン「3D VIS」として、ブランド資産を活かし、ノンフロンなどのエコ対応も進めていくと発表した。業界1位の98万台を設置する同社は、2020年には全ての自販機を標準機に変更する予定だ。アサヒ飲料 は2011年の事業方針として、自販機に関しては設置台数の増加と販売数量の拡大、ローコストオペレーションの追求に取り組むと発表、成長の原動力と位置付けている。2007年にカルピス の自販機部門と統合され、シナジー効果が生まれた事もあり、拡大路線に力を注ぐ。
一方、ダイドードリンコは、「ポイントカード対応」・「おしゃべり」などの機能を持つ高付加価値自販機や、主力のコーヒー飲料の拡販に注力しながら、「復刻堂シリーズ」など、自販機の特性を活かした製品開発を継続していく構えだ。
このように自販機の持つ、自社で商品セットをコントロールできるという最大のメリットを生かした戦略を、飲料メーカー各社が重視していく姿勢に変わりはないようだ。