今や88%の認知率と言われる「Gマーク」。50年以上の歴史を持つ日本で唯一の総合的なデザイン推奨制度である「グッドデザイン賞」の受賞デザインが付けられるシンボルマークだ。その「グッドデザイン賞」も半世紀以上の歴史の中で様々な変化を続け、トータル的な工業製品のデザインの評価から、「こと」「仕組み」といった違う視点での評価なども加わり、部門別の審査は身体・生活・産業・社会の4つの領域を対象とした審査区分へと編成されている。
今年も10月1日に1,108件の受賞が決まり、同月15日には大賞候補も発表された。この受賞デザインが一同に会する「グッドデザインエキシビジョン2012」が11月23日から3日間行われる。同イベントでは特別賞の発表や大賞の来場者投票なども併せて行われる予定だ。そして、このイベント会場内には初の試みとなる全受賞デザインが展示されるのだが、中でも注目されるのが「グッドデザイン・ベスト100」の特別展示だ。
このベスト100は受賞対象の中から未来を示唆するデザイン100件を選出し、グッドデザイン金賞等の特別賞の候補としているもの。そして、こちらも新しい試みとして、その100のデザインを手がけたデザイナーがそれぞれプレゼンテーションを行うイベントが、東京六本木において11月2日から3日間行われた。このプレゼンテーションはライヴ映像としてネットでも配信され、より多くの人たちがデザイナーの思いを知ることができたはずだ。
テーマを3つに分けて行われたプレゼンには「生活を豊かにするデザイン」として、ソニー『デジタル録画双眼鏡』をはじめとする日用品、家電、クルマなど、「産業を前進させるデザイン」として、日本マイクロソフト『Windows8』をはじめとする住宅、産業用機器、医療用機器などのデザイナー達が登壇した。そして、「社会を変えていくデザイン」では前進的な取り組みなどのデザインとして、様々なプロジェクトや震災復興支援活動などがそれぞれのデザイナーにより発表された。このテーマはグッドデザイン賞の部門としては従来の分野とは異なっており、そのため興味を持って会場に足を運んだ人も多かったようだ。
その「社会を変えていくデザイン」では、話題の社食レシピ本を出した計測器の大手タニタが出店する『タニタ食堂』や、新しいモバイルコミュニケーションツールとして世界中で7,000万人以上のユーザーが利用する『LINE』のNHN Japanなど、注目度の高い受賞デザインが登場した。また、企業のCSR活動としても評価の高かったアキュラホームの『木望の未来プロジェクト』も注目を集めていた。こちらは各地の小学校などへ企業が自ら出向いて、様々なテーマを講義する”出張授業”として同社が始めたもの。カンナがけ体験での子どもたちの関心の高さや、間伐材を採用した学習机天板の交換・再生など、住宅メーカーの利点を活かした「ものづくり」に通じる取り組みであり、ハウスメーカーが抱える「大工不足と育成」に寄与していることが評価を得たものだ。
今や主催者側も民営化され、その活動内容も大きく進化を遂げた「グッドデザイン賞」。社会の変化に合わせた新しいデザイン視点などを採用したカテゴリーの新設は、まだまだ一般的に浸透しているとは言えない。「Gマーク」の認知度の高さから考えれば、さらに積極的な広報活動を行えば、この賞の目指すものの認知度が追いつく日もそう遠くはないはずだ。