日本はエネルギーハーベスティング市場の牽引役となれるか

2012年11月12日 11:00

 光・熱(温度差)・振動・電波など様々な形態で存在する微小なエネルギーを集めて電力に変換するエネルギーハーベスティング技術。環境発電技術とも呼ばれるこの技術は、充電・取り換え・燃料補給なしで長期間エネルギー供給が可能な電源として世界的に注目を集めている。

しかしこの分野において、日本は優れた要素技術を有しているにも関わらず、欧米と比較して遅れをとっているという。こうした状況を打破すべく、日本国内の企業の力を結集し、完成度の高い製品の商品化・実用化に向けた活動を推進する、エネルギーハーベスティングコンソーシアム(EHC)が2010年に設立された。設立時には13社であった会員企業も現在では50社を超え、関連技術を持つ企業からエネルギーハーベスティングのニーズを持つ企業、そして両社のコーディネート機能を持つ企業が、国際的に競争力のあるビジネスとしての早期実用化を目指している。

エネルギーハーベスティング技術の応用で、今もっとも注目を集めているのが、無線通信との組み合わせだろう。その端緒となったのが、スイッチを押す力などを電力に変換し、これを用いて情報を無線で伝送するEnOceanの技術である。この技術は、電力源となる動作が生じてから無線通信が伝送されるまでの全過程が0.01秒で完了し、電源、配線無しで低電力のワイヤレスセンサソリューションを提供することを可能としている。

このEnOceanのエネルギーハーベスト技術を普及させることを目的に、ヨーロッパ及びアメリカの企業が中心となり、次世代無線通信規格団体EnOcean Allianceを2008年に設立。各々の製品が相互に互換性を持てるよう通信規格の標準化に取り組み、今年4 月には、エネルギーハーベストを利用した超低消費電力ワイヤレスソリューション向けの通信規格として、世界で初めて国際標準規格を取得するに至っている。現在EnOcean Allianceには、日本企業も含めて300社以上の企業が参加しており、場所を選ばず設置でき、メンテナンスコストがかからないエネルギーハーベスティング無線技術の国際的普及を図っている。すでにヨーロッパを中心に25万棟以上のビル、工場で採用されているが、日本では製品開発や導入が始まったばかりだ。

こうした中、先日、このEnOcean Allianceのプロモーターにロームが選出された。EnOcean Allianceのメンバーはプロモーター、パーティシパント、アソシエートの三段階に分かれており、ロームが就任したプロモーターはその中の最上層に当たる。日本のみならず、アジアからのプロモーター就任はロームが初となり、今後、EnOceanのバッテリーレス・ワイヤレス技術の開発促進の中心的役割を担うことになるという。遅れていた取り組みがEHCの設立などを通じて徐々に進み、日本の持つ技術力が非常に有用であると国際的に認められたと言えるかもしれない。

エネルギーハーベスティング技術の早期実用化及びその普及は、再生可能エネルギーの普及と同レベルの重要性があるのではないだろうか。今後、大きな潮流となり、巨大市場となる可能性を秘めているだけに、高い技術力を有する日本が、この市場を牽引役となることを期待したい。