プールにも活かされた、ヤマハ発動機のFRP技術

2010年11月29日 11:00

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安全性・耐久性・メンテナンス性能に優れるほか、リサイクルやリユースが可能な環境に優しいFRPプール。写真は慶応義塾大学日吉キャンパスプール(写真提供:ヤマハ発動機)

 業界1位を走り続ける、知られざるヤマハ発動機 <7272>のプール事業。その歴史はヤマハFRPの歴史でもある。

 全国の学校に設置されている25m規模のプールは約30,000基と言われ、ヤマハ発動機はそのうち5,300基を超えるプールを現在まで納めている。そして同社のプールに使われている材料がFRP(Fiberglass Reinforced Plastic)であり、こちらでは9割のシェアを持つ。東京オリンピック以降普及してきたコンクリート製のプールは1970年代前半にピークを迎え、実に年間1,000基を超える需要があった。しかし、耐用年数が30~40年と言われるコンクリート製のプールは現在、改修や建て替えが必要な時期を迎えており、耐久性・メンテナンス性能に優れるほか、リサイクルやリユースが可能な環境に優しいFRPプールは俄然注目を浴びている。

 同社がプール事業を始めたのは1974年。当時はモーターボートをはじめバイクなどのボディ素材で使用され、世界中で評価の高かったFRPの新たな事業展開を模索していた時だった。そして、考えられたのが「ファミリープール」であり、これがその後の発展に繋がっていくのである。もちろん、現在でもこの商品は幼稚園などのプールとして愛用され続け、実に2万台以上の納品実績(海外実績を含む)を持つものとなった。その後、1978年には学校用プールとして「スクール25」という25mプールの第1号を納入。以降前述のように5,300基を超える納入実績を持つに至るのである。また、1985年には流水プールやウォータースライダーを製作・納入し、レジャー施設への参入も果たした。

 さらなる発展は特設タイプのプールの納入により実現された。2001年に福岡で行われた「世界水泳」は国際公認の50mプールを特設するという業界初の試みだった。ここでヤマハFRPの技術力の高さが世界中でさらに認められることとなる。およそ1ヶ月の間使用されたプールは、大会終了後は解体・撤去され、他の地域で再利用されている。また、2003年~2005年に行われた「お台場冒険王」の人気ショー『ウォーターボーイズ』も同社が手掛けている。これらの実績により、可動型の特設プールは高精度・低コスト・短期施工・短期撤去という新たなプールの方向性を示した。

 そして、最近では全国の地方自治体などの公共施設で健康増進を目的としたプール施設の計画が増加する傾向にあり、同社は「リラクゼーション&マッサージプール」などの納入実績も高く、この分野でのシェアも拡大しているという。

 今後ヤマハ発動機は、スクールプールの改修をはじめ、パブリックビジネスのさらなる強化、ベストなクリーンシステムの提供など様々な角度からプール事業を発展させ、安全と環境の両立を掲げて、この事業に取り組む姿勢を打ち出している。
(編集担当:加藤隆文)