昨年、矢野経済研究所が発表した調査結果によると、2011年度の市場規模は1900億円にとどまるものの、2015年度には4200億円、2020年度には 1兆円を超えると予測されているビッグデータ市場。このビッグデータに注力するNEC<6701>が、工場や発電所など大規模施設(プラント)における故障の予兆を分析し、故障に至る前に設備の不健全な状況が把握できる「大規模プラント故障予兆監視システム」を開発したと発表した。
今回開発されたシステムは、プラントの設備に設置されている各種センサの情報を収集し、インバリアント分析と呼ばれる技術を用いて解析を実施。インバリアント分析技術とは、大量に収集したセンサデータの中に埋もれている、システムの特徴を表す普遍的な関係性(インバリアント)を、自動的かつ網羅的に抽出してモデル化。モデルと一致しない「いつもと違う」挙動をサイレント障害として検知する同社独自の技術である。この技術により、膨大なセンサ情報から設備の健全な運用状態を自動的に定義し、常時収集するセンサデータと比較・分析を行なうことで、故障が発生する前の不健全な状態を、通常と異なる「故障の予兆」として、いち早く検出・把握するという。計測できるセンサ種別を限定しないため、設備ごとに切り分けた複雑で多種にわたるシステム運用は必要無く、設備毎に利用されているセンサ情報から、複数の異なる設備の予兆を統合監視するシステムとしての導入が可能となっている。
同社はシステムの開発にあたり、中国電力の島根原子力発電所において実証実験を実施。2011年8月から2012年11月まで設備状態監視用センサ情報の解析を行い、過去の不具合事例などについて予兆を検出。さらに2012年10月からは島根原子力発電所の技術訓練用施設に同システムを試験的に導入し、疑似的に様々な設備故障を発生させ、故障予兆検出を行ない、良好な結果を得てきたとのこと。
プラント設備における事故・故障は、ひとたび発生すれば取り返しのつかない多大な影響を及ぼすものである。これまでは、プラント設備自体の技術を高めることで、諸外国での受注獲得を進めてきたが、それと同時に更なる安全性も提供出来ることとなる。技術大国として、他国には真似の出来ないこうした技術が益々発展することを期待したい。(編集担当:井畑学))