航空業界の上場4社(JAL、ANA、スカイマーク、スターフライヤー)の2012年度中間決算は、国内線LCC就航の影響が懸念されたが、おおむね好調だった。JALとANAは震災後の旅客需要回復とコスト削減効果が出てともに増収増益、ともに営業利益が過去最高を更新した。
ANAは国際線旅客数が前期比で16.6%も伸びたのが貢献し、売上高6.9%増で最終利益は61.6%増。しかし通期業績見通しは売上高を300億円下方修正した。その主な理由は反日デモによる中国路線の乗客減である。それでも売上高は前期比4.1%、最終利益は42.0%のプラスになる見込みだ。
9月に再上場したJALも国際線旅客数の伸びは前期比17.7%と高く、売上高5.7%増で最終利益は2.4%増。通期の売上高見通しは尖閣問題によるアジア路線の旅客減を見込んで50億円の下方修正でも0.8%増収。逆に営業利益、経常利益、最終利益はそれぞれ100億円上方修正したものの、最終利益は前期比で25.0%の減益と見込まれている。
スカイマークは機材7機増、便数33%増で売上高は前期比で16.4%増えたが、収益力が低下して最終利益は33.7%の減益となった。LCCに対抗して成田路線、関空路線で導入した格安運賃が裏目に出た。通期業績見通しは売上高、最終利益とも下方修正で、最終利益は22.1%の大幅減益になる見込み。
スターフライヤーは機材1機増で便数が24%増加し、7月に念願の国際線に進出し韓国・釜山に乗り入れた。売上高は前期比21.5%増。最終利益は81.1%増だったが、通期業績見通しはLCCとの競争激化、韓国との外交問題の影響を見込んで売上高も最終利益も下方修正。前期比では増収ながら最終利益は減益の見通しである。
国内線旅客数はJALは7.4%、ANAは8.1%伸びており、国内線LCC就航の影響は感じられない。両社ともハブとする羽田には新LCCが乗り入れておらず、国際線というドル箱も持っている。もっとも、国際線のないスカイマーク、釜山線しかないスターフライヤーは、先に影響を受け始めた。スカイマークは成田路線、関空路線で新LCCを意識した格安運賃を打ち出す代わりに羽田路線の割引率を下げたために、乗客がJALやANAに流れるという皮肉な現象が起きた。格安運賃の集客効果も薄くダブルパンチになっている。2014年の国際線進出を目指して2年前にエアバスの超大型機A380を導入する計画を発表したが、業績が頭打ちで雲行きが怪しくなってきた。
しかしJALもANAも、いずれは格安の新LCCの影響から逃れられない。2014年の羽田の発着枠再拡大で、国際線のほうのLCCが羽田に数多く乗り入れるようになると、国際線がドル箱ではなくなってくる。今後、国内線のシェアをLCCに徐々に侵食されると、国際線でカバーできず収益力が落ちていく。その頃には航空業界の再編の動きも出てくることだろう。