少子高齢化と人口流出による過疎化により地方の路線バスはどことも赤字を余儀なくされているが、バス路線の維持や利用者増加に向けて地元自治体が地元バス会社への支援を行うとともに協働連携して公共交通輸送サービスの向上を図ろうと「連携協定」を結ぶことになった。協定は3月30日に結ばれる。県レベルの自治体が民間バス会社とこうした連携協定を締結するのは「全国でも初」(国土交通省)という。
協定を結ぶのは過疎地域を多く抱える奈良県と奈良県内を中心にバス事業を営む奈良交通。
過疎地域では少子化とマイカー利用者の増加によりバス利用者の減少傾向に歯止めがかからず、不採算部門としての減便がさらにマイカー利用を増加させるという悪循環が続いている。このため、奈良交通では昨年12月に12年ぶりにバス料金を改定した。しかし、料金値上げは利用者をさらに減らすことにもなり、結果的に、バス路線の廃止にまでなりかねない状況だ。
こうした悪循環を解消する手立てにと、奈良県は(1)奈良県内におけるバス交通の利便性の向上、(2)過疎地域におけるバス路線の維持確保、(3)国内外からの県内観光地への誘客促進、(4)市街地及び観光地における渋滞対策に資するバス交通政策の推進について、奈良交通と連携して取り組む協定を締結する。
具体的には国の補助要件(経常収支率55%以上等)に満たないバス路線に対し、条件を満たすよう収支の差額を県が補填する(県では該当する11路線〔15系統〕のうち、7路線〔9系統〕について補填する)ほか、バリアフリー構想を策定している県内の橿原市と葛城市を走るバス路線のバスをノンステップバスに切り替える際に1台につき1000万円を補助。また、バス停の上屋やベンチの設置などバス停整備費用(新年度10箇所程度)を全額、県で負担するなどを予定しており、新年度予算に1億100万円を計上した。こうした支援を行うことで公共交通としてのバス路線を維持し、地域住民や観光客のニーズに合った交通手段の確保を目指す意向だ。県では、今回の対策を単年度事業として検証し、実効性をみて、継続するかどうか判断したいとしているが、過疎地域を抱える他道府県からも成果が注目されそうだ。
(編集担当:福角忠夫)