「N BOX」はライバル2車の問題点をさらけ出す
ホンダN BOXのコンセプトも前述2台と同じ、“箱”を有効に使って最大の室内空間を得るというもの。デビューは2011年11月の東京モーターショーだった。ボディサイズはライバル2台とほぼ同じで、全高がいちばん高い1780〜1800mm。エンジンはやはり直列3気筒。出力&トルクはライバルをやや上回る58ps/6.6kg.mだ。が、大きな違いはない。
荷物の積載に際して、N BOXはユニークな後席アレンジ機構を持っている。後席は分割して前方にフォールダウン出来るのはもちろんだが、後方フォールアップというような、跳ね上げて後方に立てて収納できる。荷室開口部の480mmという低さもN BOXのポイント(タント:595mm/スペーシア535)で、自転車や重たい荷物の積載にメリットがある。
また、坂道の発進で逆行を防いでくれる「ヒルスタートアシスト」やバックでの車庫入れを支援する「ピタ駐ミラー」などの快適運転支援システムが充実しているのもN BOXの特徴だ。
N BOXを消費者が選ぶ最大の理由?
N BOXが売れる理由の大きな要素は前述の快適運転支援システムと「安全装備の充実」だと推理する。もちろん、他の2台も一般的な両席エアバッグ、EBD付きABSなどは標準装備となっている。が、決定的に異なっているのが、VSA(ヴィークルスタビリティアシスト:横滑り防止装置)の有無だ。ホンダN BOXは2014年10月から義務づけられる横滑り防止装置装着を先行して全車標準装備としている。しかしながら、他の2台にはオプションとしての設定すらない。これは自らの顧客であるホンダ車ユーザーの安全を最大限に重視するメーカーとして良心の現れだと思う。
2007年デビューのタントはモデルチェンジ間近なので次世代に期待するとして、つい最近まで軽自動車販売台数でトップを走り続けてきたメーカー、スズキの今年2013年春デビューの最新モデル・スペーシアに「横滑り防止装置」が装着されていない。ここに多くの消費者は疑問符を付けざるを得ないのだと思う。
1年半ほど前にデビューしたNの好調ぶりを開発陣は知らなかったのだろうか? 残念ながら、いまさら「安全は商売にならない」と考えてしまったのか、「ユーザーの安全を重視しないメーカーが負け組に……なった」ということか?(編集担当:吉田恒)