ハイブリッドやEVに代表されるエコカーブームも、すっかり定着した感があるが、これまでのエコカーよりもさらにエコで、手軽に乗れる「超小型EV」の開発が進んでいる。
超小型EVとは、軽自動車より小さい1~3人乗りの超小型電気自動車のことで、国土交通省のガイドラインによると、車格は軽自動車以下、電気自動車(EV)の場合の定格出力は8kW以下、内燃機関の場合は125cc以下と規定されている。
環境性能に優れるだけでなく、軽自動車よりもコンパクトで小回りが利き、原付などのミニバイクよりも安全性が高い。当然、自転車やシニアカーよりも遠方へ行けるとあって、とくにシニア層の買い物や通院などに重宝されそうだ。
国土交通省はこの「超小型EV」を「超小型モビリティ」として新しい規格の乗り物に位置付け、安全基準などを2013年の1月末に施行する予定をしている。乗車定員は1~2人、高速道路は走行不可となるが、税金や車検などは当面、軽自動車と同じ扱いとなる見通しだ。
超小型EVは、家庭用のコンセントで充電が可能。また、車検・車庫証明・重量税・取得税などは、現在のところ一切不要とのこと。主なターゲットとしては高齢者が想定されるが、小回りが利いて経済的な「超小型EV」ならば、車離れが進んでいるといわれる若い世代にもアピールできる。流通業などでの商用利用という用途もあるだろう。新しい都市活性化のツールとして普及すれば、低迷する自動車業界のカンフル剤となりえるかもしれない。また、海外に向けての話題性も充分だから、今後、巨大市場として成長する可能性を秘めている。
現在、各社本腰を入れて開発に力を入れており、すでにラインナップも出揃いつつある。トヨタ車体<7221>の「コムス」をはじめ、ホンダ<7267>も「マイクロコミュータープロトタイプ」を発表している。また、大手自動車メーカーだけでなく、鳥取県米子市上福原の旧JT米子工場跡に進出した電気自動車会社「ナノオプトニクス・エナジー」は昨年、運転免許が要らない歩行補助用の超小型EVを発表しており、3月から生産を開始するとしている。
とはいえ、09年頃から市場に出回り始めている超小型EVの売り上げは、現在のところ芳しくはない。一番の問題点は、やはり価格の問題だろう。超小型EVは自動車メーカーを中心に開発が進められているが、どうしても慣れ親しんできたガソリン車と同じ機能を追及してしまうようで、走行距離が長く、車内スペースも比較的大きなものを作ろうとする。そのため、電池も高性能のものが必要となり、結果的に電池の機能と価格がまだニーズに追いついていない。
ガソリンの価格が高騰を続ける中、約100円程度の充電で50kmほど走れるコストパフォーマンスは大きな魅力ではある。しかし、ランニングコストがいくら安いといっても、車体価格が100万円を超えるようでは、消費者の心をつかむのは難しい。セカンドカー的なイメージしかないようで、売れ行きは今一つ伸び悩んでいるのが現状だ。ここにきて、トヨタもホンダも70万円程度の価格を打ち出してはきているものの、それでもまだ微妙な値段といわざるをえない。もう少し出せば軽自動車が買えるし、定員1名なら、原付の方がもっと安い値段で購入できる。何となく、価格面ではインパクトに欠けてしまうのだ。
価格面の問題もさることながら、従来の交通手段と何が違うのか、どういったメリットがあるのか、車やバイクなどに代わる新しい移動手段として消費者に訴求することができれば、超小型EVの爆発的な普及もそう遠いことではないだろう。(編集担当:藤原伊織)