新政権でどう変わる わたしたちの暮らしと環境 (4)暫定税率の廃止

2009年09月11日 11:00

 民主党は「自動車関係諸税が複雑で、自動車ユーザーに過重な負担を強いていることから、抜本的な整理が必要」として、自動車取得税の廃止をはじめ、自動車重量税や自動車税は保有税(地方税)に一本化し、その税収を自動車から生じる社会的負担に広く対応する地方の一般財源にする」方針を出している。

 また、ガソリンや軽油にかかるガソリン税や軽油引取税は将来、「地球温暖化対策税」(仮称)として一本化するとしている。

 そのための環境づくり(税制改革)の第一歩として「暫定税率は地方分を含め全廃する」としており、「国直轄事業に対する地方自治体の負担金制度も廃止し、暫定税率廃止後においても、地方の道路整備事業は従来水準を維持できるようにする」と地方自治体が暫定税率廃止に対し懸念していることに対しても、心配のない対応をするとしている。

 ガソリンには現在、揮発油税48円60銭と地方揮発油税5円20銭の53円80銭の税がかかっており、このうち、25円10銭が暫定税率として徴収されている。

 このため、自動車関連諸税にかかっている暫定税率が全廃されれば、消費者はガソリン価格では現行より25円10銭、軽油の場合17円10銭安く購入できる予定。自動車重量税も500キロあたり6300円かかっている税が2500円に下がる。自動車取得税も現行の5%が3%になる。暫定税率が廃止された昨年4月(期間は1ケ月のみだったが)の状態になると思って頂ければ、分かりやすい。

 民主党では「暫定税率は課税の目的を失っており、これを廃止して税制に対する国民の信頼を回復するとともに、車での移動に依存することの多い地方の国民の負担を軽減したい」として、2010年度から実施する。

 また、民主党のマニフェストで注目され続けてきたのが「高速道路の段階的無料化」。

 民主党は無料化を利用の少ない地方の高速道路から順次実施し、2012年度には阪神高速や首都高速を除く高速道路で完全実施をめざしたい意向だが、同党政策調査会では「一定期間、社会実験を行って、どの道路を無料にするか、判断していきたい」考えだ。

 高速道路の無料化によって、並行して走る一般道の渋滞が緩和される効果が期待できる一方で、高速道路そのものが渋滞を引き起こすことも考えられ、渋滞によるアイドリング時のCO2排出が特に懸念されることから、こうした懸念のあるところで実験を行ったうえで無料化するか、料金引き下げを行うかなどの検討を行っていく予定。

 基本的には「予算編成で、財源確認などをしながら、できるだけ多くの箇所で無料化を実施したい」考えだが、実験結果によっては、阪神高速や首都高速以外の高速道路でも無料化できない箇所が出てくる可能性も残している。

 また、暫定税率の廃止や高速道路の無料化は自動車の利用を格段に増加させることとなり、CO2排出要因を増加させる。

 暫定税率の廃止と高速道路の段階的無料化による景気の底上げ効果とは逆に2020年までに1990年比でCO2を25%削減するという政策との整合性が問われる。ただ、ガソリン税や軽油引取税は将来、「地球温暖化対策税」(仮称)として(税率や目的は変わるものの)新たに設けられることや、地球温暖化への国民的な運動、理解が進めば(工業用、商業用、業務用など事業用車には課題が残るものの)自家用車については3ナンバー車から5ナンバー車への乗り換えやエコ車への乗り換えなど、エコを考えた車志向がより高まるものと考えられる。暫定税率の廃止により、年間でCO2排出量が2400万トン増加するとの試算もあるようだが、この数値を下回るエコ行動が国民一人一人に求められているといえよう。
(編集担当:福角忠夫)