”理科離れ”が深刻化 日本を支える教育とは?

2009年04月03日 11:00

 2002年、個性を伸ばすことを目的とした”ゆとり教育”の一環として、公立の小・中学校及び高校で毎週土曜日を休みとする完全週休2日制が実施された。しかし7年という時間経過の中で、学習時間自体が減ったことによる学力低下が囁かれているも事実である。

 なかでも特に問題視されているのが”理科離れ”。2007年末に発表された国際学力調査「PISA(OECD生徒の学習到達調査)」のテスト結果では、科学的応用力は前回(03年実施)調査結果である2位から6位にまでに後退している。

 これらの原因のひとつとして挙げられるのは、授業内での実験数の激減。土曜日が休みとなり授業数が減ったため、教科書上に示された「やってみよう」「トライ」「参考」のアイコンで分類される項目は、時間に余裕がないために実験をせず、原理の説明だけで終わらせることが多くなってしまった。

 反対に手軽に準備ができ、ひとつの実験用具で応用がきく電流に関する実験のようなものは頻繁に行われている。また、保護者から「実験よりも受験に役立つ授業にして欲しい」、「危険な実験はやめて欲しい」といった要望が出ていることも実験激少の一因になっているようだ

 ベネッセコーポレーション調べによると、1990年には理科を「好き」と答えた小学校5年生は71.4%だったが、2006年には68.5%まで落ち込んだ。さらに、教職経験歴10年未満の教員を対象に行ったアンケートでは、理科指導が「苦手」「やや苦手」と答えた人が6割を超えた(科学技術振興機構実施)。特に”ゆとり教育”で育った教員は自分たちが学生の頃に実際行っていない実験を教えなければならない、という問題も発生している。今後は実験準備やわかりやすく教えるなどといった指導方法をベテラン教員から若手の教員へ伝えることも必要になってくるだろう。

 ひとりひとりの個性を伸ばすことを目的としてスタートした”ゆとり教育”がもたらしたのは、子供たちの学力低下という結果だった。今春からは新たな学習指導要領が実施される。一転して「脱ゆとり教育」が叫ばれるようになった今、理科の実験や観察などが重視されている新しい学習指導要領の内容を見ると、日本の子供たちの”理科離れ”への危機感が伺える。

 戦後、日本のあらゆる面での発展に貢献してきたのは、「なぜ?」「どうして?」と思う疑問系な考え方。経済面で低迷し続ける日本が、理科離れによりあらゆる発展に必要不可欠である部分までも、バランスを崩しはじめているのなら、今すぐにでも打開策を考えることは必須である。