私のしごと館 更地売却しても浮くのは8億円?

2008年12月11日 11:00

 581億円もの巨費を投じて建設された「私のしごと館」は、オープン後も毎年の赤字を雇用保険料で補填するなど、対投資効果が見られないまま、今後も赤字解消への目途が立たないことから、さきの行政減量・効率化有識者会議では「業務廃止」についての方針が打ち出されたが、厚生労働省職業能力開発局長が有識者の参集を求めて、本年3月から「私のしごと館のあり方検討会」(座長・加藤丈夫富士電機ホールディングス株式会社相談役)を開催し、民間委託の実施状況の評価やその結果を踏まえた「私のしごと館の存廃を含めたあり方について」議論した結果が、12月10日、公表された。

 私のしごと館は中高生を中心に職業キャリア教育支援を行う目的で職業体験や職業情報の提供などを行ってきたが、大幅な赤字続きのため、運営を株式会社コングレに委託。委託契約期間が平成22年8月までとなっているため、この期間終了時に「国の事業としての私のしごと館事業を廃止する」こととし、「事業主が負担する以外の支出が発生しない場合には、施設運営をするためのビジネスモデルやコンセプトを構築する必要がある」としている。

 建物については更地鑑定価格が約37億円であるのに対し、取り壊し費用だけで約29億円と算出されており、「現在の経済情勢からすると、37億円で売却することは難しいと予測され、建物の取り壊しは避ける必要がある」と報告。つまり、更地にして鑑定価格で売却できたとても、8億円しか浮かないことになり、施策失敗のつけの大きさが改めて浮き彫りにされた格好。

 このため、検討会では、建物取り壊しはあきらめ、「関西経済界や自治体など地元関係者や委託先業者の意向を踏まえて、シンクタンクなどに調査を委託し、建物の有効活用を検討すること」を提案するとともに、文部科学省との連携を図りながら職業キャリア教育の充実に繋げていくことが望まれる」として、早急な取り組みを要望している。