利用者が急増するスマートフォンと並び、節電・非常時対策として普及の進められているスマートハウスが主役となった最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2012」。多くの企業が太陽光発電システムや蓄電池・HEMS(ホームエネルギー・マネジメントシステム)などを展示していたが、中でも三菱電機やパナソニックがスマートハウスに広く展示スペースを割いて注目を集めていた。しかし、これらの展示に物足りなさを感じた来場者も少なくないのではないだろうか。何に物足りなさを感じたのか。それは平たく言えば「どこの展示も同じ」という点であろう。
太陽光発電や燃料電池で作った電気を蓄電池に溜め、HEMSによる最適制御で快適に過ごしながら利用する。電気自動車やブラグインハイブリット車に搭載された蓄電池とも連携をする。これだけのことである。各社その中で個性を出そうとはしているものの、スマート家電との連携に関しても、法律の壁等の要因もあって至極中途半端なものとなった。
例えば、パナソニックの「AiSEG」。本体と計測ユニットからなり、家庭内の電力状況を専用のモニターやスマートフォン・タブレット、ビエラコネクトなどで確認できるHEMSであるが、その自動制御の例の一つに「エアコンの自動制御」が挙げられている。エコモードに設定すると、運転を開始してから30分後に省エネ温度(冷房は28度、暖房は20度)に自動で変更するという。室温の状況ではなく時間での変更である点や、省エネ温度は変更が出来ない点など、「快適な生活」ではなく「節電」にばかり重点が置かれた観が否めない。スマートフォンによる操作に関しても、可能なのは宅内における状態確認とオフ操作のみである。
また三菱電機は、神奈川県鎌倉市で実証実験を実施中の「大船スマートハウス」のシステムを展示。太陽光発電と電気自動車などの容量の大きい蓄電池を連携して制御するHEMSを利用することで、災害などの停電時に1週間以上電気的自立が可能な「スマートハウス」であり、早期実用化が望まれるものではあるものの、今年5月に発表された実証実験であり、また少し毛色は異なるものの、既に積水ハウスが「太陽電池・燃料電池・蓄電池」の3電池を連動自動制御する独自HEMSを採用することで非常時の電源を確保したスマートハウスを販売していることなどからも、目新しさには欠けるであろう。多くのHEMSは、機能が電力の見える化のみであるものや、発電や蓄電は制御できるが家電は制御出来ないため、非常時に家電機器を最適制御するHEMSであることに焦点を絞った展示となっていれば印象は変わっていたかもしれない。
太陽光発電システムや蓄電システム・HEMSなど、それぞれの機器に特化した企業の展示には、制御システムの高度化や発電・蓄電の大容量化などの未来を感じる最先端技術が見られたものの、それら技術の粋を集めた筈のスマートハウスとなると急激に現在へと引き戻される。確かにスマートハウスは住宅の大多数を占めたとは言えず、普及を始めた段階ではあるかもしれない。しかし「CEATEC JAPAN」が最先端IT・エレクトロニクス総合展であることを考えれば、さらにその先の未来を見せる展示であるべきだったのではないだろうか。