製造業を中心に海外展開が進む中、現地における人材育成は大きな課題の一つとなっている。ものづくりをグローバルレベルで標準化するための人材教育について、進出企業ではどのように取り組んでいるのだろうか。
ヤマハ発動機では、海外生産の割合が高まる中、現地社員の育成に力を注いでいる。海外現地社員の採用を積極的に行っている企業の一つである。同社の生産部門におけるグローバル人財育成の取り組みとしては、インドネシアの訓練施設「グローバルトレーニングセンター(GTC)」での教育や、本社への留学制度「ME100(Manufacturing Engineer100)」などが実施されている。GTCでは、本社から派遣されたトレーナーが世界共通のトレーニングカリキュラムで指導を行い、生産オペレーターや監督者、製造技術者などを育成。一方、日本のモノ創りを各国の製造拠点に伝授し、各拠点の自立と現地化を推進するために2008年からスタートした「ME100」では、品質・コスト・納期のつくり込みができる製造技術者を5年間で100人育成することを目指した取り組みを実施している。
この「ME100」については、今年も第5期生として女性2名を含む28名が来日。留学期間は1~2年で、各国で入社後4~5年間、生産技術に関わる仕事に就いていた彼らに対し、留学先の本社で個人ごとに作成された研修カリキュラムを実施。最初の2か月間で日本語研修を集中的に行い、その後各職場に配属されて主に設計図面段階のニューモデルが工場で生産できるようにするための仕事(=新機種生産準備業務)を学びながら、同社の社訓や企業理念等を徹底的に伝授されるとのこと。このOJTによる指導が中心の研修において、最大の壁は言葉。また、国によって異なる生産技術の専門用語にも苦労が多く、さらに、各拠点での経験により業務レベルの異なる人が混在しているため、「各々のレベルを正確に把握することも重要」だという。
「ME100」を卒業したこれまでの留学生たちは、自国の拠点に戻り生産準備プロジェクトのリーダー格として活躍。また、留学生がパイプ役となり、本社と海外製造拠点の繋がりが一層深まったという二次的な効果も生まれ始めているという。一方で、こうしたグローバル人材の育成を行う企業としては、せっかく時間とお金をかけて育成した貴重なグローバル人材が流出してしまっては大きな損失・痛手となる。グローバル人材の育成には、会社理念への理解や技術・能力などの向上と共に、愛社精神も育む取り組みが重要なのではないだろうか。