積水ハウスのラインナップ拡充がスマートハウス普及の加速を図る

2012年10月03日 11:00

 昨年来、住宅メーカー各社から相次いで発表されているスマートハウス。このスマートハウスに関し、平成21年3月に太陽光発電システムや燃料電池を組み合わせた環境配慮型住宅「グリーンファースト」を、平成23年8月には世界初の3電池(太陽電池・燃料電池・蓄電池)の連携制御が可能な「グリーンファースト ハイブリッド」を発売し、今年4月には日本初となるスマートタウン「スマートコモンシティ明石台」のまちびらきを実施するなど、市場を牽引してきた積水ハウスが、その商品ラインナップ拡充を発表した。

 今回拡充されたのは、蓄電システムのラインナップ。従来の3電池連動の「グリーンファースト ハイブリッド」(高耐久鉛蓄電池8.96kWh+太陽電池+燃料電池)に続き、2電池連動(リチウム蓄電池4.65kWh+太陽電池)の「LiBシステム」と、EV(電気自動車)搭載蓄電池を利用する「V2H(Vehicle to Home)システム」を新たに追加し、多様化するニーズへの対応を図っている。

 我慢することなく大幅な節電を実現する従来の「グリーンファースト ハイブリッド」は、停電時にもエアコンが使えて入浴が可能など、普段に近い生活ができることなどが評価され、発売開始から1年となる8月末時点での受注実績が累計318棟となっている。また、平成23年度新エネ大賞でも「経済産業大臣賞」を受賞するなど折り紙つきだ。

 今回新たに追加された、リチウム蓄電池搭載のLiBシステムでは、不意の停電に対応できるよう常に電池容量の半分を残すなど「グリーンファースト ハイブリッド」の非常時の考え方をベースにした。ハイブリッドシステムに比べて電池容量が小さいため、非常時のエアコン使用・入浴などが制限され、使用できる時間も短くなるものの、その分のコストダウンが図られている。ハイブリッドシステムの蓄電池は、パワコン・HEMSも含めて200万円。HEMS補助金を得ても190万円程度であるものが、LiBシステムでは定価で170万円。さらにHEMS補助金だけでなく定置用リチウムイオン蓄電池導入促進対策事業費補助金の対象でもあるため、実質価格は120万円程度にまで抑えられるという。

 V2Hシステムは、EV搭載蓄電池からの給電を可能にするもの。24kWhという大容量蓄電池を、安い深夜電力で充電し、日中に住宅に給電することで光熱費の削減を実現する。オール電化の場合で約1日分の家の電気を賄うことが可能とのこと。

 今回のラインナップ拡充は、太陽電池・HEMS・燃料電池・蓄電池の組み合わせや性能で他社との差別化を図っていたものが、住宅メーカー各社のスマートハウスが概ね出揃ったことで、商品ラインナップの充実度合いで差別化を図る段階に移行しつつあるということであろう。コストダウンが図られた商品が登場したことで、スマートハウスの普及がどの程度加速するのか、注目が集めるところであろう。ただ、スマートハウスの最先頭を行く積水ハウスのこれらのシステムでさえ、LiBでは燃料電池との連携がいまだ取れない、V2HではEVが日産リーフに限定され、また非常時にEVがクルマとして活躍するのか電源として活躍するのか2択を迫られるなど課題も多い。「いまだ電池間、EVと家、そして家電間のシステム規格などが統一されていないことがボトルネック」(同社広報部)。スマートハウス先進国として、国際競争力を発揮するためにも、業界、行政と連携した取り組みが急務と言えるだろう。