ささやかな抵抗も実を結ばす NECスマホ事業から撤退

2013年08月04日 16:26

 この春先から様々なメディアで報道されていたことが、ついに現実となった。

 NEC<6701>は、スマートフォンの新規開発を中止し、現在販売中の機種をもって生産および販売を終了すると発表した。なおスマートフォンに関する保守は引き続き行うとしている。また、従来型携帯電話機の生産とタブレット事業については継続していく。

 スマートフォンの急速な普及など携帯電話端末の市場が大きく変化する中、競争力の維持・強化にはスケールメリットが重要となっているが、同社の携帯電話端末事業は出荷台数が減少傾向にあり、今後の業績改善を見通すことが難しくなっていたという。そこで同社は、携帯電話端末事業の方向性について総合的に検討した結果、今回の決定に至ったとしている。これにともない、継続事業に従事する従業員を除いて、同社グループ内で社会ソリューション事業を中心に人員を再配置するとのこと。

 NECの携帯電話事業は、かつて2つ折りの端末が人気を集め、国内シェアが20パーセントを超えた時期もあった。しかしその後の開発競争に遅れをとり、iPhoneのアップルなど海外勢にシェアを奪われ事業の赤字が拡大していた。またNTTドコモが5月からサムスンとソニー<6758>の機種を優先的に販売する戦略をとったことにも少なからず影響を受けている。近年のシェアは10パーセントにも届かない状況だった。

 また、NEC は、こうした状況を踏まえて中国のレノボ・グループ と携帯電話事業の統合交渉を続けていたが、出資比率など条件面で折り合いがつかず、結局、スマートフォン事業からの撤退という苦渋の選択を強いられたことになる。ささやかな抵抗も実を結ばなかったということだ。

 かつては、日本を代表するテクノロジーカンパニーであったNECだが、3年前には、政府が推進する次世代スーパーコンピュータ・システムのプロジェクトから離脱したりもした。そして今回また事業がひとつ縮小されるというのは寂しい限りである。(編集担当:久保田雄城)