スマホゲームに押され、岐路に立たされる任天堂

2013年07月27日 19:30

 今月の15日で、販売開始から30周年を迎えた任天堂<7974>のコンシューマーゲーム機「ファミリーコンピューター(通称ファミコン)」だが、その累計販売台数は世界で6000万台以上。国内ではほぼ2世帯につき1台の割合で所有されており、誰もが認めるゲーム機の代名詞的存在である。

 「ファミコン」は、任天堂のゲーム機開発責任者だった上村雅之氏らによって、当時ゲームセンターで人気だった「ドンキーコング」を自宅でも遊べるようにしようというアイデアから、1981年に開発が始められ、83年に発売されるやいなや、「スーパーマリオブラザーズ」「ドラゴンクエスト」などの人気ソフトを生み出し、コンシューマーゲーム機の市場をほとんど独占する形となった。

 しかし、そうして30周年を迎えた「ファミコン」を生み出した任天堂も今、スマートフォン向けソーシャルゲームなどに押され、苦しい時代を迎えている。ソフト会社「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」<3765>のスマートフォン用ゲーム「パズル&ドラゴンズ(通称パズドラ)」などは、サービス開始から1年4ケ月ほどでダウンロード数が累計1600万件を突破し、「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」の時価総額も一時、任天堂を上回った。

 今年の6月に京都市内で行われた任天堂の株主総会では、営業損失364億円(2013年3月期連結決算)という2年連続大赤字に対して、株主から「リストラを検討すべではないか?」との声が上がる場面も。しかし任天堂の岩田聡社長は、「社員が不安を抱えたまま作ったようなソフトでは、人の心を動かすことは出来ない」といった企業理念のもと、リストラの可能性を否定し業績改善を約束したが、任天堂関係者は「株主総会でリストラ案が提案されるのは異例のこと」と、その衝撃を隠しきれずにいた。

 30年前、ファミコンが発売された当初には、任天堂にこういったリストラの話が持ち上がるなど、誰も夢に思わなかったことだろう。右肩あがりの急成長を続けるソーシャルゲームの存在により、今、任天堂は大きな岐路に立たされている。(編集担当:滝川幸平)