世界を視野に入れるソフトバンクの地道な戦略は実を結ぶか

2013年09月08日 20:27

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ソフトバンクモバイルは、スプリント・ネクステルの買収によって世界第三位の携帯電話会社となった

 ソフトバンクというと、どうしても何かと話題に上ることの多い、創業者の孫正義氏とCMの犬、「お父さん」の印象が強烈である。最近では、米国第3位のスプリント・ネクステルの買収など華やかなトピックが多い。しかしながら同時に世界を視野に入れた地道な活動も行っているのだ。

 インドの通信業者Bharti Airtel Limited(以下、Bharti Airtel)とソフトバンクモバイルは、伝送路に衛星通信を利用し、コスト効率の良い携帯電話サービスを提供する実環境での実験(フィールドトライアル)をケニア共和国において実施し、実用化可能な技術の構築に成功したと発表した。

 従来、固定通信や移動通信の設備の建設が困難な地域では、衛星伝送路を利用した通信網の構築が検討されてきたが、主に利用料が高額であることがネックになっていた。今回、都市部や街の外部地域での通信衛星を利用した通信サービスの提供を、低コストで実現するための技術と方法について検証を行った。

 通信衛星の電波帯域を共有して通信サービスを提供する技術はソフトバンクモバイルが既に商用展開しており、2011年3月に発生した東日本大震災においても300を超える衛星基地局を運用し、通信不能となった地域の携帯電話網を構築した実績がある。今回はこの技術に、セルを大きくする技術を組み合わせることで、1台の基地局でカバーできる通信可能エリアを大きく広げることに成功した。

 また、今回の実験で成功した技術は、衛星帯域を通信量に合わせて動的に各基地局に割り当てることによって、相反する低コストと高速化を同時に実現する技術であり、伝送路コストを大幅に削減して、地上系の伝送路が届かなかった遠隔地の集落でも携帯電話サービスを利用できるようにするもの。

 ソフトバンクモバイルは、スプリント・ネクステルの買収によって世界第三位の携帯電話会社となった。だが孫正義氏はもちろんこれで満足しているわけではなく、トップを目指しているのだろう。そしてその基盤というのは、当然「お父さん」ではなく、こんなフィールドトライアルであることは間違いない。(編集担当:久保田雄城)