6月に閣議決定された平成25年版の「土地白書」によると、「土地・建物は両方所有したい」と持ち家を希望する回答が79.8%と12年ぶりに8割を切った。また、その一方で賃貸でも構わないとの回答が12.5%と過去最高に達しており、「賃貸住宅派」も徐々に増えつつあることが伺える。
家賃や間取り、立地条件など、住宅を借りる際に気になることは多々あるが、やはり、安心して住まうために不可欠となるのは、住宅の安全性だ。しかし、国土交通省の推計によると、2008年時点で国内の総数約4,950万戸の内、実に約21パーセントにあたる約1,050万戸について耐震性が不十分との調査結果が発表されている。政府は2020年までに耐震化率を90パーセントにまで引き上げる目標を掲げているが、当然のことながら災害はいつ起こるか分からず、悠長なことはいっていられない。当然、これから建築される賃貸物件においても、耐震化が求められてくるだろう。
このような状況を踏まえ、積水ハウス株式会社は、賃貸住宅の耐震化の促進を目的として、2階、3階建て賃貸住宅「シャーメゾン」において、住宅性能表示制度の耐震最高等級である等級3を10月1日(火)より標準化すると発表した。
耐震化は他のメリットも生む。地震保険改定により、始期日が2014年7月以降の地震保険契約は、ほとんどの都道府県において、地震保険料が増額となるが、住宅性能表示制度の耐震等級3の住宅は、割引率が30パーセントから50パーセントに拡大される。耐震等級3を標準化することにより、オーナーは地震保険料負担が大幅に軽減されることになる。つまり、耐震性能の高い建物は、入居者にとって安心して暮らせるのはもちろんのこと、耐震強化によって固定費負担の軽減ができるため、オーナー側にとっても長期の安定した経営に繋がるというわけだ。
賃貸住宅で耐震等級3を標準化するのは業界でも異例のことだが、政府の耐震化の方針に対して、ようやく賃貸住宅でも、業界トップ企業が耐震強化に動いたことで、この流れが本格化していくのではないか。東日本大震災以降、国民の防災意識も高まっており、これからは賃貸であっても、家賃や間取りと並んで、耐震性能の高さも重要視されることだろう。住宅性能表示制度の評価書があれば、耐震性能も確認できるため、入居者もなお安心だ。借りる前に住宅の耐震性を確認するのは、これからの賃貸住宅ライフにとって必須の自己防衛手段ともいえる。(編集担当:藤原伊織)