持ち家を買う若者が年々、減っている。「平成24年度 国土交通白書」によると、若者の持ち家比率は20年前と比べて軒並み低下。特に30代の減少幅が大きい。全年齢平均の持ち家比率が6割前後で推移している中、30代はここ25年間で53.3%から39%まで、14ポイントも低下した。「家を買わない、買えない」若者が増えている理由には、収入の不安定化で結婚する若者が減っていることや少子化など、さまざまな要因がある。
ところが東京圏だけは例外のようだ。東京圏における30代持ち家比率は、バブル期から90年代後半にかけて46%から31.3%にまで低下した。だがその後持ち直し、2008年には約4割まで回復。特に持ち家比率の上昇が顕著なのは、全国一、地価が高いはずの東京都だ。
なぜ東京で家を買う30代が増えているのか。背景には(1)「都会に住みたい若者」の増加と、(2)そうした若者が、家を購入する中心層の30代後半に突入したこと、(3)さらにその需要に応えるかのように住宅ローンの金利低下が進み、東京では分譲マンションの建設が増えたたことがあげられる。
「国土の将来像に関する世論調査」の結果によると、「大都市に住みたい」という若者の割合は1994年から2001年にかけて上昇している。こうした若者が東京へ流入し、現在、持ち家の中心的な需要層である30代後半に突入している。彼らが東京で分譲マンションなどを買ったことで統計上、東京圏の30代全体の持ち家比率が引き上げられた可能性がある。90年代後半からは住宅ローンの金利が下がり、彼らの購買意欲を後押しした。東京における持ち家の新設着工戸数は、2000年代にかけて毎年25万戸前後と高水準で推移している。
最近では「家を買わない」一生賃貸派も少しずつ増えているが、依然として20~30代の約8割が「将来は自分の家が欲しい」と考えている。全国的には持ち家比率が下がって「家を買えない」若者が増える中、東京でのみ持ち家=分譲マンション熱が盛り上がっているのは、新しい格差の象徴かもしれない。(編集担当:北条かや)