期待の高まる有機EL照明はLED照明に続くことが出来るのか

2012年09月18日 11:00

 昨年、震災を契機として急拡大したLED照明市場。しかし近時は価格が下落、特需的な勢いもひと段落していることなどから、国内の市場は遠からず縮小に転じるのではないかとの予測もなされている。こうした中、2011年に照明器具の商用販売が開始され注目を集めつつあるのが有機EL照明である。無機半導体に電圧をかけることで発光するLEDに対し、有機材料に電圧をかけることで発光する有機EL。現在は、携帯電話・スマートフォンなどの小型ディスプレイの光源が用途の大半を占めているが、今後は大型ディスプレイの光源や照明などへの用途拡大が期待されており、研究開発が進められている。

 パナソニックは、有機EL照明デバイス(パネル・モジュール)において、従来の電球色(3000K)に加え、昼白色(5000K)と白色(4000K)のラインアップを発表。厚さ約2mmの薄型の有機EL照明パネルは、出光興産との合弁会社であるパナソニック出光OLED照明から発売。パネルに制御回路を内蔵した有機EL照明モジュールは、パナソニック エコソリューションズ社が発売している。いずれもRa90以上の高演色性と高輝度を世界最高水準のレベルで両立し、寿命1万時間(光束維持率70%)と照明用途に最適な性能をバランスよく同時実現。視野角依存性にも優れているため、見る角度による色味の違いを低く抑えているという。

 現在、有機EL照明パネルは、「蒸着」成膜プロセスによる製造が一般的であり、発光性能を上げるため、発光層を複層化するなど、複雑な構造となっている。しかし、面積が広く、欠陥の少ない均一発光面のパネルを低コストで量産するためには、「塗布」成膜プロセスでの製造が優れていると考えられている。中でも、有機EL照明パネルの性能に大きく影響し、材料費が高額な発光層を塗布プロセスで成膜することへの要求は強いものの、これまで開発されたものは発光効率や寿命が照明用としては不十分であった。こうした中、三菱化学とパイオニアは、発光層を塗布プロセスで成膜した有機EL素子の開発に成功。三菱化学が開発した塗布成膜プロセス用の独自の発光材料の使用と、両社が共同で素子設計および塗布成膜プロセスを最適化することで、照明として実用レベルの長寿命と高効率化を達成しているという。さらに三菱化学は、有機EL照明パネルを五洋建設本社ビルに納入するなど実用化も進めている。

 光源の性能向上と連動して本格的な量産が始まれば、製造コストが大幅に下がるとみられる有機EL照明。コストが下がれば普及が進み、富士経済の調査によると、2020年には1085億円もの市場になると予測されている。LED照明の普及は、震災という契機があってこそのものであった。有機EL照明は、同様の契機なく予測通りまたはそれ以上の普及をみせることが出来るのであろうか。注目に値するのではないだろうか。