「電子書籍元年」と言われた2010年から3年経つ。だが紙の本をおびやかすほど、電子書籍が普及しているかといえば、答えは「否」だ。それどころかこの2年間で人々の電子書籍に対する関心が低下していることが、インターネットコムとgooリサーチの調査で明らかになった。
インターネットコムが全国のネットユーザー約1000名を対象に、2年前から行っている定点調査によると、2011年10月には「電子書籍に関心がある」人の割合(※注1)が約65%を占めていたが、今年9月~10月には「関心がある」人の割合が約54%まで低下。
データの詳細はこうだ。「電子書籍を読んだことはない」人のうち、「これから読んでみたい」という人の割合が、ここ2年で44%から31%まで減り続けている。もちろん電子書籍の目新しさがなくなり、関心が薄まっただけという解釈もできるが……。
電子書籍を「読みたくない」理由は、「紙の書籍・雑誌の方が好き」が42.5%と最も多く、僅差で「画面では読みにくい」42.1%、「紙の書籍・雑誌で十分満足」35.2%となった。紙の方が読みやすく、特に必要性を感じないという人が多いようだ。「価格が高い」と答えた人も15.9%いた。
電子書籍の価格に対する消費者の目線は厳しい。楽天リサーチの調査結果をみると、1商品あたりの購入価格は「300円以下」が7割を占めている。電子書籍は紙の本より1~2割程度安くなるが(※注2)、参考までに昨年のベストセラー『聞く力』(阿川佐和子著、文藝春秋)をみると、電子版と紙が共に840円。アマゾンの古本では10円から出品されており、送料を入れてもこちらの方が大幅に安い。中古市場で大量に出回りがちなベストセラーに限っては、電子書籍は紙に太刀打ちできないだろう。
これらの理由で、まだ紙の書籍を好む消費者が多いとなると、多くの電子書籍は割高と感じられても仕方がないかもしれない。(編集担当:北条かや)
(※注1:「読んだことがある」と「読んだことはないが今後読んでみたい」の合計)
(※注2:電子書籍の価格については、NTTデータ経営研究所「電子書籍の進化普及による出版業界構造変化へのインパクト」を参照)