脳を創るのはディスプレーではなく紙媒体

2013年07月28日 09:55

 筆者は、自他ともに認める活字中毒で、なおかつ新しモノ好きだ。電子書籍も、今から14年前、ソニーの広辞苑などがバンドルされた電子ブックプレーヤーも購入したぐらいだ。そして3年前の「電子書籍元年」の時も、いろいろと試してみた。しかし結局、今も読書の90パーセント以上は紙媒体である。
 
 トッパンフォームズは、ニューロ・テクニカとダイレクトメール(DM)に関する脳科学実験を国際医療福祉大学の中川雅文教授(医学博士)の監修のもと実施した。実験では、近赤外分光法(NIRS: near-infrared spectroscopy)を用いて、人がある特定の活動をするときに脳のどの部位が関わっているのかを調べることができる近赤外光イメージング装置を利用し、DMに接したときの脳の反応を測定した。個体差がない非常にシンプルな生理学的反応から、少ない被験者数(6名)でも安定した結果を導き出せるのがこの装置の特徴だという。

 その結果、DMのメディアとしての特性や他のメディアと比べた優位性など、これまで実証されなかったことが脳の生体反応レベルで判明した。なかでも、同じ情報であっても紙媒体(反射光)とディスプレー(透過光)では脳は全く違う反応を示し、特に脳内の情報を理解しようとする箇所(前頭前皮質)の反応は紙媒体の方が強く、ディスプレーよりも紙媒体の方が情報を理解させるのに優れていることや、DMは連続的に同じテーマで送った方が深く理解してもらえることなどが確認されたとしている。

 トッパンフォームズでは、今回の脳科学実験により判明したデータの分析をさらに進め、そこから得られた知見を今後のダイレクトマーケティング戦略策定に活用していくとしている。先日、筆者は「脳を創る読書」(実業之日本社刊)を読んだ。この本が説いていることが、今回の脳科学実験で検証された形になったわけである。(編集担当:久保田雄城)