内閣府が先日発表した月例経済報告によると、大企業を中心に企業収益が改善へと進んでおり、全体で緩やかな回復傾向にあるという。また、帝国データバンクから発表された景気動向調査でも小規模企業の景気動向指数が2か月連続で過去最高を更新し、国内景気の上昇が地方経済にも浸透しているとされている。
同調査によると、10業界中7業界が改善、51業種中6業種で過去最高を更新しており、とくに消費税増税の決定で湧いた建設関連と製造関連は4カ月連続で改善し、大幅な伸びを見せている。これは、消費税増税の駆け込みもさることながら、太陽光発電をはじめとする新エネルギー市場が拡大していることも大きな要因となっているようだ。また、災害復旧工事や震災復興での土木工事の需要や、東京五輪関連の受注も増えているとみられる。
しかし、このままこの好調は持続できるのだろうか。とくに地域工務店などは、今後の市場の動向に少なからず不安を抱いているようだ。消費税増税による市場の冷え込みもさることながら、人口減少と高齢化よる需要の減少などが不安要素としてあげられる。また、業界内部的にも、職人不足が加速していることや、直近では、燃料や材料、人件費の高騰による単価の上昇などが大きな課題となっており、安定した経営を維持すること自体が流動的で困難な状況となっているのだ。
そのような中、積極的に状況を打開すべく、活動している団体もある。全国約350社の工務店が集う日本最大の工務店ネットワーク「ジャーブネット」(主宰:アキュラホーム)が主催する経営塾、「永代ビルダー塾」などは、その代表的な取り組みといえる。同塾では3年間、経営理念・経営計画の策定からキャンペーンの企画などまで幅広いカラキュラムを実践することで、これまでの下請け・リフォーム中心だった事業から元請注文中心に変革するよう経営者の意識を改革し、家業から企業へと導くためのものとなっている。 同塾以外にも、それぞれの地域の商工会議所などでは経営セミナーが数多く開催されているようだ。
消費税増税決定後、政府では、住宅ローン減税の優遇措置や、すまい給付金の受給などで、駆け込み需要の反動による住宅市場の冷え込みを抑制しようとした甲斐もあって、前回の増税時よりは、今のところ混乱も少ないようだ。しかしながら、実際に5パーセントから8パーセント、さらに15年に10パーセントに引き上げられることによって、大手ハウスメーカーも含め、住宅市場全体が苦戦を強いられるであろうことは想像に難くない。その中で、地域の工務店が元請注文でどう立ち向かっていくのか。激動の時代を生き残るためには、工務店自身が不断の努力で経営力を高めることが必要になってくる。(編集担当:藤原伊織)