国土交通省が5月31日に発表した2013年4月の新設住宅着工戸数は7万7894戸で前年同月比5.8パーセント増、また季節調整済年率換算値では93.9万戸、前月比3.9パーセントの増加となっている。とくに持ち家については、前年同月比17.5パーセント増と大幅に増加しており、住宅着工戸数は、8ヶ月連続で前年同月の水準を上回った。
個人の住宅購入意欲を後押ししているのは、2014年4月に8%、15年10月には10%にまで引き上げられることが決定している消費増税も一因だが、一方で、大手銀行などが住宅ローン金利を引き上げる動きを見せるなど、住宅購入意欲を抑制する場面もあり、二の足を踏む消費者も多かったようだ。
ところが、6月に入ると今度は一転して、大手銀行で住宅ローン金利の引き下げ競争が始まった。
口火を切ったのは三井住友銀行<8316>で、これまでの年1.5パーセントだった固定型3年の住宅ローンの最優遇金利を一気に0.6%にまで引き下げたのだ。これに慌てた三菱東京UFJ銀行<8306>とみずほ銀行<8411>も、三井住友に追随するかたちで、6日にそれぞれ同水準に引き下げる方針を表明している。
この背景にあるのは、日銀による金融緩和策だ。
日銀は11日、金融機関の貸出増加を支援するための資金供給制度の初回貸し付け予定額が3兆1519億円になると発表した。黒田東彦日銀総裁は「金融機関の積極的な需要がみられている」と評価しているが、各銀行に対する貸出増加の圧力とする見方もある。
日銀が昨年導入した貸出増加支援制度は、4半期ごとに国内貸出を増加した銀行に対して、日銀が低利で一定金額を融資するというもの。初めての適用は2013年1-3月となり、三井住友銀は同4半期の貸出が前4半期の2012年10-12月を上回ったことで、日銀から0.1%の低利で資金を調達できることになったことを受け、その一部を住宅ローン商品に還元したかたちとなる。
一方、通常の調達資金を原資に追従するしかない三菱UFJとみずほにとっては大きな負担になるが、上限や期限を区切っていること、また3年固定商品の需要はそれほど多くはないこと、また、その後の長期ローンへの切り替えや、給与振り込み口座などの面で総合的に採算を目指す見通しだ。
住宅ローン金利が引き下げられるのは、消費者にとっては有り難い話だが、金利の情勢がコロコロと変動するようでは、戸惑ってしまう。そこで重要な鍵になるのは、ハウスメーカーの営業マンだ。
大手ハウスメーカーはもとより、中小のホームビルダーや工務店の営業マンがどれだけこの複雑な情勢を把握し、住宅購入後のライフプランを具体的にかつ誤解のないように説明して、客と真摯に向き合えるかにかかっている。
例えば、19期連続で増収を達成しているアキュラホームなどは、こうした動向を管理する部署を設け、営業マンが常に正確な知識を取得出来るようにサポートしており、金融情勢をはじめ、より良い判断の材料となる様々な情報を個々の状況を踏まえ、消費者に提供できるようにしているという。
今後は消費増税前の駆け込み需要が予想されるが、買いたい一心だけでは数年後に大きな後悔をすることにもなりかねない。末永く快適に過ごすためには自身のライフプランに合わせて検討することが大切だ。(編集担当:藤原伊織)